録音3日目、死刑執行の日。
職員「お別れですよ」
死刑囚「お世話になりました」
職員とともに死刑場に向かう足音も録音されている。そして、重い扉が閉じる音が響く。読経が聞こえ、それが終わると最後の会話…。
所長「何か言い残すこと、忘れてることない?」
死刑囚「先生には無理ばっかり。ありがとうございます」
教育課長「また会おう」
死刑囚「ええ。先に逝ってます」
この言葉の後、読経が大きくなり、ドーンという重いものが落ちたような音。刑が執行されたのだ。録音の最後は医官の報告だった。
医官「報告します。刑執行2時59分。刑終了3時13分2秒。所要時間14分2秒。終わり」
死刑囚が取り乱したのは、姉と最後に名前を呼び合った時だけだった。
スタジオには、東京拘置所の刑務官として死刑執行にも立ち会った野口善國弁護士を招き、死刑の現実を聞いた。

元刑務官 野口善國弁護士「1971年の4月から1年間、東京拘置所に勤務しました。当時は執行前日の告知でした。実際、告知の後は今の録音のような印象です。自分が面会に立ち会った時の様子を思い出しました。(中略)私が立ち会った告知を受けた死刑囚は冷静で、なんていうか静かに受け止めているという印象でした。最後の面会は奥さんとおじさんでしたが、『自分は犯した罪によって死んでいくが、人はいつか死ぬ。自分は仏教を信じ、悟りを得たいと思ったが、なかなかできなかった。でも明日死ぬとわかって悟ったというか、心の平静がある。だから悲しまんでくれ』と言っていて、ある意味立派だと思ってしまいました」
野口氏によれば、事前告知がいいか、現状の直前告知がいいか判断はできないが、自分の知る限り表面上かもしれないが皆落ち着いていたという。かつて死刑囚がカナリヤを飼えたことに驚いたと告げると…。
元刑務官 野口善國弁護士「私の頃は(死刑囚が)文鳥を飼ってました。死刑囚同士で野球のまね事なんかもしてました。布で作ったボールなんかでね。…一見平穏な毎日を装っているようでした」
野口氏は実際死刑にも立ち会っているが、実は今、死刑をめぐってもう一つ裁判が始まろうとしていた…。