■誰が死刑の執行に選ばれるのか“ブラックボックス”

死刑執行は判決が確定してから6か月以内に行らなければないと刑事訴訟法では義務付けられているが、実際はそうなっていない。オウム事件の死刑囚の執行が行われた時は「平成の事件は平成のうちに」とも言われた。では誰をいつ執行するのか、誰が決めているのだろうか。大きな事件の後に死刑執行がされるケースがあるのは単なる偶然なのだろうか。安倍元総理の銃撃事件の18日後に秋葉原無差別殺人の犯人の死刑執行。そして秋葉原無差別殺人があった2008年も事件の9日後に連続幼女誘拐殺人事件の犯人の死刑が行われた。治安という観点から死刑執行が行われることはないのだろうか。

検事時代に死刑を求刑する事件を担当したこともあり、法務大臣として死刑執行を命じたこともある山下貴司元法務大臣は上記のケースを完全に否定したうえで、詳しいことは言えないと繰り返す。

山下貴司元法務大臣「一定の判断基準を言うことによって誤った憶測を呼ぶ可能性がある。死刑囚がいつ施行されるか、罪と向き合う部分もある中で無用な誤解を受けたくない。執行に関わる基準や手順は極秘で判断し部内でも一部の担当者だけ、誤った憶測や、死刑囚の心情に影響を与えることは慎むべきだと考えている」

死刑問題を取材している共同通信編集委員兼論説委員の佐藤大介氏は死刑の“ブラックボックス”化を問題視している。

共同通信編集委員兼論説委員 佐藤大介氏「死刑は国が合法的に人の命を奪える究極の権力行使。その行使をするにあたってその人にどういった基準で行ったのか公表しないままだと、憶測になってしまう。それは不健全で、本当のことはすべて『お答えできない』になってしまうと死刑制度という制度を信頼できる制度として維持できるのかと言う根本的な疑問が常について来る」

死刑の方法はもとより、死刑制度の是非はまだまだ議論が必要だろう。被害者遺族の感情や、犯罪の抑止力として死刑の必要性を訴える声はまだまだ強い。

イギリスは、世論は日本と同様80%以上が死刑制度存続に賛成だったが、政治の力で死刑を廃止した。日本は、どうするのだろうか?

(BS-TBS 『報道1930』 12月13日放送より)