「フェーズフリー」な避難先へ

民泊は空き家問題の解消・解決にも一役買うことが期待されるが、民泊の4割超が集中する東京23区では、ゴミ出しや騒音など利用者のマナーに関する近隣住民の苦情が急増していて、このところ自治体による規制強化の動きが相次いでいる。前述の墨田区でも、新規の事業者を対象に宿泊期間を週末のみに限定するなどの条例が2025年12月に可決、公布された(9)。

民泊を2次避難先の“もう一つの選択肢”に加えるためには、制度化だけでなく地域社会の理解が欠かせない。
地元住民にそっぽを向かれるような民泊で避難者が安心で快適な避難生活を送れるとは思えないからだ。空室を活用することが前提の民泊は、平常時と災害時とを分けず、普段から利用できて災害時にも役に立つ「フェーズフリー」の考え方と親和性が高い。
だからこそ、民泊の仕組みや存在が違和感なく社会に受け容れられた先に、災害時での有効活用の道が開けるのではないだろうか。

〔参照文献・引用したウェブサイト等〕
1)消防庁災害対策本部,令和6年能登半島地震による被害及び消防機関等の対応状況(第122報)(2025/12)

2)石川県,石川県における能登半島地震への対応について 2次避難所の運営について(2024/8

3)内閣府(防災担当),令和6年能登半島地震における避難所運営の状況(2024/6)

4)観光庁 観光地域振興課,次期観光立国推進基本計画の検討状況(2025/9)

5)阪本真由美,日本災害情報学会 第31回大会予稿集「2次避難先としての民泊の活用に関する研究 -2024年能登半島地震の事例より-」

6)墨田区,「災害時における民泊施設提供の協力に関する協定」を締結しました(2024/3更新)

7)観光庁 民泊制度ポータルサイト 住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?

8)中央防災会議 防災対策実行会議 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ,南海トラフ巨大地震 最大クラス地震における被害想定について 【定量的な被害量】(令和7年3月)

9)墨田区,住宅宿泊事業等の規制のあり方に関する検討を行っています(2025/12)
Airbnb 公式ウェブサイト ニュースルーム
やどかりプロジェクト 公式ウェブサイト

〔筆者プロフィール〕
福島 隆史
TBSテレビ報道局解説委員(災害担当)
日本民間放送連盟 災害情報専門部会幹事
十文字学園女子大学 非常勤講師
内閣府「災害発生時等の帰宅困難者等対策検討委員会」委員
令和6年度 気象庁長官表彰