海外・国内の先行事例と今後の課題
阪本教授によると、海外では、災害時の宿泊先として民泊を活用することは一般的に行われていて、2012年にアメリカ東海岸を襲ったハリケーン・サンディや2023年のトルコ大地震(Mw7.8)、2025年のアメリカ・ロサンゼルスの山火事などで実績があるという。
国内に目を向けると、東京都墨田区が2023年11月、災害時の要配慮者の避難場所に民泊を活用する協定をAirbnb Japanと締結している。
地震や水害などの災害発生時に、妊産婦や乳幼児をはじめとする要配慮者を対象に、民泊で7日を限度として受け入れる想定で、費用は原則、区が負担する(6)。
しかし、日本における民泊の歴史は2010年代半ば以降と比較的浅く、その仕組みや制度についての理解も深まってはいない。能登半島地震で2次避難先への民泊の活用に地震発生から約1か月半の期間を要したのも、行政の民泊に対する理解不足が一因だという。
民泊の活用に課題「180日の壁」
前述のとおり、民泊が2次避難先の有効な選択肢になりうることが能登半島地震で明らかになった一方、制度上や運用面での課題も見つかった。
民泊で人を宿泊させる日数は、「住宅宿泊事業法(民泊新法)」によって1年間に「180日を超えないもの」と定義されている(7)。だが、災害時の避難では滞在期間が半年以上の長期にわたるケースも十分考えられ、阪本教授は上限日数について「今後、災害への適応を考えるなら、緩和または撤廃する措置が必要」と指摘する。
阪本教授はさらに、2次避難に協力可能な民泊事業者をあらかじめ登録しておくプラットフォームや、空室を確保することによって民泊側に生じる損失を補填する仕組みの必要性を説く。実際、民泊事業者が空室を確保したにもかかわらず、結果的に利用されないケースが能登半島地震であったという。

















