市場介入の「可能性」が効くか
その一方、今回の利上げによって、為替市場介入の可能性が、再び出てきたと言えることは、大きな成果です。
アメリカのベッセント財務長官は、10月、「金融政策が適切なら、円はふさわしい水準を自ら見つけ出す」「日本政府が日銀に政策余地を与えることが、為替レートの過剰な変動を避ける鍵となる」などと公言しました。これらの発言は、「市場介入の前に、まず自ら金融を引き締めろ」と言っているに等しく、市場関係者の間では、日本が利上げしない限り、市場介入には応じられないという立場を示したものと受け取られていました。市場介入は、日本が単独で行う場合でも、アメリカの通貨当局の、少なくとも「黙認」が必要なのです。
1回の利上げでアメリカが日本からの市場介入要請に、「うん」と言うかどうかはわかりませんが、少なくとも市場介入があり得る状態に戻したことは、今後、為替市場をけん制する一定の効果はありそうです。
米利下げの行方が左右
そして、何より影響が大きいと思われるのは、やはり、アメリカの金融政策の動向です。中央銀行にあたるFRBは、今年9月から3回連続の利下げを行いました。現時点でのFRBの中心的な見通しは、来年さらに1回利下げするというものですが、FRB内部の意見は大きく分かれています。
そうした中、近くトランプ大統領は、パウエル議長の後任となる新議長が指名される見通しで、今後の利下げペースは、新議長の考え方に大きく左右されます。パウエル議長を「遅すぎる人」と批判してきたトランプ大統領が、利下げ推進派を指名することは間違いなく、中間選挙を前に、FRBがいつ、どれだけ利下げするかは、為替市場に大きな影響を与えるでしょう。
仮にアメリカがさらに2回利下げすれば、政策金利は3.0〜3.25%に、一方、日本が1回利上げすれば1.0%になります。日米金利差が2%を切ると、為替市場が円高に振れることは、これまでの歴史の経験則でもあります。
弱い通貨で強い経済などあり得ない
1ドル150円前後と言う異常な円安は、すでに一時的ではなくなり、常態化しつつあります。これが当たり前のこととして定着してしまえば、日本の国力を決定的に低下させてしまうと、私は危惧しています。これ以上、「弱い日本」を見たくはありません。超円安で輸出企業にバッファーを作ったところで、本質的な国際競争力回復につながらないことは、過去30年の歴史が証明しています。
基軸通貨国でもないのに、「弱い通貨」で「強い経済」などあり得ません。隔世の感がある「超円高時代」を駆けた世代の一人として、「強い日本経済」が「強い円」と共にあったことを、十二分に知っています。もちろん、高市総理も、その世代の一人です。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)














