個々の思いを共有することでチーム力が向上
世界陸上終了後の山本は、駅伝に向けて自身が何ができるかを考え始めた。
「2年目(昨年)までは自分が、駅伝で重要な役割を果たすことは考えていませんでしたが、今年は代表になった経験を生かして、自分がチームに勢いを付ける意識をもって(駅伝2週間前の)ここまでやってきました」
昨年は個の力を生かす駅伝を目指した積水化学だが、今年は若手とベテランの力を融合し、チームワークで戦おうとしている。
積水化学は千葉県柏市を拠点とする本隊と、東京都世田谷区を拠点とするTWOLAPS TCに分かれて練習を行っている。TWOLAPS TCでは主要区間を走ってきた新谷仁美(37)と楠莉奈(31)、東京世界陸上1500mに出場した木村友香(31)、今年の日本選手権1500m4位の道下美槻(24)らが活動する。個の育成を重視し、2つのグループで選手の成長に最適の環境を提供しているのだ。結果として日本代表を多く輩出し、東京世界陸上には山本、木村、マラソンの佐藤早也伽(31)と3人を送り込んだ。
今年の駅伝におけるテーマは、「今までの大黒柱で勝つのでなく、新しい力で勝つ」(野口監督)こと。そのために山本は、若手の気持ちをまとめたいと考えた。佐々木梨七(23)、山﨑りさ(23)たち柏組の若手を食事に誘って、駅伝について本音を聞いた。東京本社に出社後に世田谷組と合流し、選手それぞれが思うところを話し合った。
「私はこうしたい、こう思っている、というところを語り合いました。あの子はこういう目標で頑張っている、あの子も辛いけど頑張っている。そういう思いを共有して練習すると一体感が出て、プラスの力が出るんです。木村さんは複数の実業団チームを経験されていて、お話がすごく参考になりました」
コミュニケーション能力が高いことも山本の特徴で、長距離以外の種目の選手とも仲良くなって、その選手と一緒に戦うことを代表を目指すモチベーションにもしている。海外遠征では外国人選手だけでなく、現地の一般人と仲良くなることもあった。山本のコミュニケーション能力は今年の積水化学には、大きな力となっている。

















