イスラム武装組織タリバンが実権を握ってから1年余り経ったアフガニスタンでは今、麻薬のまん延に人々が苦しんでいる。現地取材から見えた中毒者の壮絶な生活、緊迫の摘発現場。そこには、“麻薬の闇”に隠された事実が…麻薬汚染の実態に迫った。

■まん延する“麻薬” アフガンで何が

アメリカ軍の完全撤退とともに前政権が崩壊したアフガニスタンでは今、国民の9割が貧困ラインを下回る生活を余儀なくされている。貧しい生活と、長年の戦争によって家族や友人を亡くした喪失感から、麻薬に手を染める人は後を絶たない。20年ぶりに実権を握ったイスラム組織タリバンは、薬物の撲滅を目指し、摘発を強化していると主張している。

2022年8月、私たちは西側テレビメディアとして初めて深夜に行われる摘発の同行取材を許可された。摘発にあたるのは、治安部隊に属するタリバンの戦闘員だ。

JNN中東支局長 須賀川拓記者
「治安部隊の車にも物乞いが…外国メディアが乗っている車にはお金がもらえるものと思って寄ってくると思うんですけど」

目的の地区に入ると車から降りたタリバン兵たちが、麻薬中毒者の捜索に散らばる。

須賀川記者
「今あそこ逃げている、逃げている、逃げている!が―っと逃げて行った」
「路上に歩いていた3人くらいを突然タリバン兵が座れと言って、壁際に座らせて…これ正直ですね、彼らが麻薬中毒であるかどうかの検査はもちろんしていないんですよね」

拘束された人たちが、次々と車に乗せられていく。

須賀川記者
「多分、『俺は麻薬中毒者ではない』と言っているんでしょうか。摘発に抵抗している人がかなり激しく…めちゃくちゃだね」

次に向かったのは、カブ―ル郊外の草木もまばらな荒れた丘。兵士たちが駆け下りていく。