■須賀川記者がタリバン幹部に問う「本当に薬物を撲滅しようとしているのか」
須賀川記者
「タリバンがパトロ―ルに来たけど完全に素通りだね。サイレンは鳴らしているけど」
夜の摘発には取材陣を同行させて取り締まりをアピ―ルしたタリバンだが、この日は麻薬中毒者を放置していた。
タリバンは、本当に薬物を撲滅しようとしているのか。私たちは、昼間に再び薬物治療病院をたずねた。

須賀川記者
「私の左手側に白い服を着た人たちがいるんですが、勧善懲悪省ですね。きょう麻薬中毒になった患者たちにイスラ―ムの教えをもう一度教えるために来ているんですね」
続々と広場に出てくる薬物依存症の患者たち。勧善懲悪省は、イスラムの教えに国民が従うよう行動を監視し、時によっては処罰する組織だ。その職員の説教が始まった。
勧善懲悪省の職員
「悪い人とは関わらないことです。そういう人たちとの関わりが、あなたの健康をむしばみ、信仰心をも汚してしまったのです。この生活から抜け出すためには、宗教関係者と話をしてモスクに行く習慣をつけてください」
重度の場合、治療に数か月かかることもある薬物依存症だが、ここでの入院期間はわずか45日間だ。そのため退院しても、患者のほとんどが再び薬物に手を出してしまうという。
激しい腹痛と下痢を訴え運ばれてくる男性がいた。これまで何度も連行され、入退院を繰り返してきた。

入退院を繰り返す男性患者
「助けがあったら、こんなことにはなっていないのに。お腹が痛くて、頭がおかしくなりそうだ」
男性から聞いた手掛かりを元に、兄を探し当てた。男性の兄は、カブ―ル郊外で溶接工をして暮らしていた。

入退院を繰り返す男性患者の兄
「弟には兄弟は一心同体なのだと伝えていました。とにかく薬物を止めて家に帰って来い、と言ったんです」
タリバンは1990年代に実権を握っていたとき、イスラムの教えに従い薬物の栽培や取引を禁じていた。
しかしその後、アメリカの軍事侵攻によって政権を追われると反政府側になったタリバンは、貴重な資金源となる薬物の取引を再開させたとみられている。2018年に発表されたアフガニスタンの違法薬物に関するアメリカ政府の報告書にも、こう記されている。
「タリバンの資金源の6割は、薬物取引に由来している」
その後、アメリカ軍は完全撤退し、再び政権の座についたタリバンは、かつてのように“薬物を禁止する”と国際社会にアピ―ルした。
タリバン幹部で病院の責任者に直接、問い質した。
須賀川記者
「アメリカはタリバンがアヘン製造によって利益を得ているのではないかとみているが?」
タリバン幹部 アブゥドル・メンガル氏
「彼らは私たちの敵です。長い戦争状態の中でアメリカが言い出したプロパガンダです。それこそが、彼らの戦い方なのです」
須賀川記者
「あなた方が麻薬を撲滅しようとしているとは、とても思えないが?」
タリバン幹部 アブゥドル・メンガル氏
「麻薬の栽培はゼロになると信じています。アフガニスタンにはたくさんの地下資源があります。地下資源で得られる利益は、アヘンと比べると何倍も多いのです。薬物の問題はきっと解決します」














