その走りを見た河野監督は、大阪国際女子マラソンの先頭集団で走ることを小林に提案した。大阪では5km毎を16分45秒平均で走り抜き、中盤までは16分30秒前後のハイペースも3回刻んでいた。そして東京世界陸上ではスタート直後に先頭に立ち、世界トップ選手たちの前を走った。小林はマイペースを貫いただけだったが、初めての世界大会でその走りができてしまうのは驚きだった。
2年前まで市民ランナーとして走っていた小林にとって、多くのレースが自身の殻を破る機会になった。そうしたレースを繰り返すことで小林は成長し、本人の意識も少しずつ、世界で戦う選手に変わっていった。昨年のプリンセス駅伝だけが特別だったわけではない。