元大蔵大臣・渡辺美智雄とのつながり
1997年に自民党へ復党した新井は、かつて所属していた渡辺美智雄派(渡辺派)には戻らず、三塚派(清和会)に入った。三塚派幹部の亀井静香から直接誘いを受けたためで、事件当時も亀井グループに属し、大蔵委員会に所属していた。
しかし復党からわずか数か月後、証券取引法違反の疑いが発覚することになる。
新井に政治家への道を勧めたのは「ミッチー」の愛称で知られる渡辺美智雄だった。副総理、外務大臣、通産大臣、大蔵大臣を歴任した自民党の実力者で、1993年には総裁選にも立候補している。
渡辺の政治信条は「政治家の仕事は、勇気と真心を持って真実を語ること」。この言葉は2024年、石破茂総理大臣が所信表明演説で引用し、裏金事件で失われた自民党への信頼回復を誓ったことでも注目を集めた。
国会で新井は、株取引に関わる経緯をこう説明している。
「私は渡辺美智雄大蔵大臣の秘書官をしておりました。その折、『政治家になったらどうだ』という大変ありがたいお話をいただきました。私は地盤も看板も基盤もないので一度は断りました。その際、渡辺先生に『私は在日の韓国人として生まれ、16歳まで在日韓国人でした。このことは大蔵省も知らないと思います』と正直に申し上げました」
「すると先生は『今隠すことがあるなら、おれに言っておけ』とおっしゃり、さらに『おれが面倒を見てくれる人間を探す』として、ある証券会社の大幹部を紹介してくださったのです」(参考人質疑 1998年1月30日)
新井は、紹介された証券会社幹部にこう自己紹介したという。
「僕は大蔵省出身で、今でも親しくしている役人は大勢いるし、大蔵委員会の理事もしているから、日常的に大蔵省の役人と議論しているんですよ。よければ、大蔵省の方をご紹介しますし、何かあったら、僕に言ってくれれば、いつでも相談に乗れると思いますよ」
新井をめぐる容疑はこうだ。
知人の西田邦明名義で「借名口座」を日興証券新橋支店に開設。同社元副社長とその部下だったH元常務に対し、「確実に儲けさせてほしい」と執拗に利益を要求していたとされる。
日興証券側は、自己売買で得た利益をこの「借名口座」に付け替え、新井はその結果、約4,900万円の利益提供を受けた疑いがもたれていた。特捜部はこのうち証拠がはっきりしている約2,900万円について、証券取引法違反(利益供与の要求)の容疑で逮捕状を請求した。
