総理に手渡されたメモ…こばわる表情
1998年2月19日――戦後の政界事件史に深く刻まれる一日となった。
東京・霞が関の中央合同庁舎6号館にある検察庁。東京地検特捜部の政界ルート捜査を担う「特命班」を率いる粂原研二(32期)は、庁舎内でNHKの国会中継を見ていた。その最中、画面にニュース速報が流れた。
「自民党・新井将敬議員がホテルで自殺を図る」
衆院本会議場に第一報が入ったのは午後3時過ぎ。
村岡兼造官房長官が大臣席から身を乗り出し、耳打ちで情報を受け取った。メモは松永光大蔵大臣から小渕恵三外務大臣へ、さらに橋本龍太郎総理大臣へと回された。
テレビに映し出された橋本総理の表情は、明らかにこわばっていた。
この日、特捜部は新井将敬の逮捕の許可を橋本内閣に求め、衆議院で「逮捕許諾」が議決される見通しだった。だが、議場を覆ったのは予想外の訃報だった。














