新登場の「投票日前の選挙特番」

今回の参院選報道で特筆に値するのが一部の民放が放送した事前特番だ。

テレビ東京は「選挙サテライト2025」という“投票前の選挙の特番”を7月6日(日)と7月13日(日)、さらに7月19日(土)と3回にわたって1時間弱放送した。キャッチフレーズは「役に立つ!テレ東の新たな選挙報道」「投票前の知りたいにこたえる新特番」だ。

7月20日(日)の夜の選挙開票特番「選挙サテライト2025」の一部という位置づけで、開票特番で特別キャスターを務める伊沢拓司らが出演した。7月6日の初回の放送では放送法や公職選挙法で「政治的に公平」や「選挙の公正」を尊重するあまりに各局でなぜ選挙期間中にテレビ報道が減ってしまう事態が生じたのかというからくりを解説した。

その上でBPO(放送倫理・番組向上機構)が「量的な公平ではなく質的公平を」「編集権・報道の自由は守られている」と各テレビ局に呼びかけていることを紹介して、選挙期間中に3回の“投票前特番”を放送するにいたった経緯を豊島晋作キャスターが説明した。

そこでは“財務省解体デモ”などこれまでの選挙報道では放送しなかったような出来事を、国民の間につのる「負担増」の象徴として登場させていた。コメ問題で脚光を浴びた小泉農水相に対する自民党内での反発なども取材。第2回ではSNS時代に参政党などの新興政党に人々が熱狂する背景を報道した。

TBSも7月14日(月)夕方ニュース番組「Nスタ」の中でキャッチフレーズの「選挙の日、そのまえに。」と題する大特集を放送した。

中盤情勢をまとめてTBS報道局選挙本部の本杉美樹デスクが、政党同士の勝敗でカギを握る「1人区」の見通しなどを分析、「自公過半数割れの可能性」などについて解説し、7月20日(日)のTBS開票特番でキャスターを務める爆笑問題の太田光が石破茂総理はじめ、各党トップに直撃した内容を放送した。

なかでも太田光が参政党の神谷宗幣代表に新憲法案などについて「今の憲法を変える必要があるのか」と問いただす場面は太田自身の人間性も透けてみえて興味深かった。

こうした“党首たちとの本音のやりとり”も開票特番のたびに「どうして事前に放送しなかったのか?」と視聴者から指摘されてきた点でもあった。これらTBSとテレ東の事前番組が象徴するように、2025年参院選のテレビ報道は「まえに」というキャッチフレーズで大転換を図ったことになる。