■「腰を抜かした」安倍元総理の衝撃発言 

2月27日。自民党の国防族議員は、たまたま見た民放の報道番組に衝撃を受けた。

「安倍さんが話している内容を聞いて、腰を抜かしたよ。議論していいのかって」

番組に生出演した安倍元総理は、これまで議論がタブー視されてきた「核シェアリング」=「核共有」政策に言及していたのだ。
「核シェアリング」とは日本にアメリカの核兵器を配備し、日本とアメリカが共同で運用する仕組みのこと。厳しい世界の現実を直視した政策なのか、それとも非現実的な絵空事なのか・・・。ロシアによるウクライナ侵攻で世界が一変しようとるするなかで、政界での議論も熱を帯びている。


■安倍氏「核共有タブー視せず議論を」

その日の番組のテーマはロシアへのウクライナ侵攻だった。議論のなかで安倍氏が強調したのがヨーロッパの安全保障の「現実」だった。たとえばドイツの場合、国内の基地にアメリカの核爆弾を配備し、有事となればドイツの戦闘機に搭載して爆撃に行く態勢を整えている。これが、ドイツ・ベルギーなどNATOの一部加盟国が採用している「核シェアリング」政策だ。安倍氏は番組のなかで「こうした現実を多くの日本国民は知らないだろう」としたうえで、次のように訴えた。

「この世界はどのように安全が守られているかという現実について議論をしていくことをタブー視してはならない」

その4日後には、自身が率いる安倍派の会合でこうも述べている。

「NATOは核シェアリングという手法で核の脅威に対して抑止力を持っている。もしウクライナが(NATO)に入ることができていれば、このような形にはなっていなかっただろう」

安倍氏は中国などを念頭に「日本も核大国に囲まれている」と指摘し、国民と日本の独立を守るためには日本でも「核シェアリング」の是非を議論すべき旨を力を込めて語った。


■「非核三原則の堅持」への誓いはどこへ

ただ、日本には核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則がある。

総理時代の安倍氏自身も毎年、広島と長崎を訪れ、式典で非核三原則を堅持することを誓ってきた。「核シェアリング」は核兵器を日本国内に配備することになるわけで、三原則のうち少なくとも「持ち込ませず」には反することになるだろう。

野党側からはこれまでの安倍氏の言葉は「嘘だったのか」と反発の声があがるが、政界では「核シェアリング」についての議論に賛同する声も相次いでいる。