■焦る菅総理 9日間の“迷走”の末に・・・
「私に遠慮せずやれ」
岸田氏の出馬会見から4日後の8月30日。
菅総理は二階氏に党役員人事を行うことを伝え、二階氏もこう了承した。しかし・・・菅総理への支持は広がらなかった。むしろ、党内の亀裂が深まり、当初考えていた党役員の交代もできない形に追い込まれた。その結果、
「私自身、新型コロナ対策に専任をしたい、そういう思いの中で自民党総裁選挙には出馬しない」
9月3日、菅総理は自民党総裁選への不出馬を表明。
岸田氏の出馬会見から9日間で明暗が分かれた。ある岸田派のベテラン議員は「総裁選の行方を決めた日は8月26日だった。毎年、この日にお祝いをしたい」と振り返った。
4人で闘う構図となった総裁選は、決選投票で岸田氏は河野氏を制し、総裁の座をつかみ取った。
■側近が語る総理就任後の変化「“決められない”男から“決断の早い”男に」
背水の陣の総裁選に勝利した岸田氏。矢継ぎ早に今度は、総理就任後、わずか10日で解散する。まさに“奇襲だった”。今でも岸田氏は、あの時のことを語っている。
「コロナの感染状況や与野党の駆け引きなど、色々考えた末に就任して10日で解散しました。もし私が選挙で負けていたら結果として第100代総理大臣として30日余りで終わってしまっていた。政治家として大きな賭けでありました」
衆院選で、自民党は改選前から議席は減らすものの、絶対安定多数の261議席を獲得した。岸田氏のいわば“賭け”がことごとく成功した。
木原氏は、こうした例からも『決断がものすごく早くなった。総理になってさらに変わった』と語る。決断の早さには、傍にいながら驚くこともあるという。
2022年は、コロナ対策や経済政策、外交と、政権が向き合う課題は山積している。さらに、夏には、今後の政権運営の命運を握る参議院選挙が控えている。岸田総理の掲げる「新時代共創内閣」。新たな安定政権を築き、国民にとっての成果を残すことができるのか。正念場となる2022年、岸田総理の“手腕”が問われている。
TBSテレビ報道局政治部 官邸担当
中村 由希