「ゆうやけこやけのえのぐばこ」


共に絵を描くことが好きな日本兵と中国の青年との戦時中の友情を描いた物語です。

舞台の始まりは2000年代の日本。


少女サキが、自宅に届いた小包を見つけます。送り主は中国の石家荘市に住む人からでした。中身は、古い絵の具箱。中国で戦死したサキの祖父で、画学生だった作蔵(さくぞう)お爺ちゃんのものだったのです。

『サキは応接間にかかっている作蔵お爺ちゃんの「夕焼け空」の絵が大好きでした』(「ゆうやけこやけのえのぐばこ」より)


作蔵お爺ちゃんが命を落とした日中戦争。当時、中国の人々は食料を奪って、乱暴を振るう日本兵を恐れていました。

『私たち中国人にとっては悪夢のような出来事でした』
『無人区とよばれていた日本軍の兵舎をみていつもブルブルとふるえていました』(「ゆうやけこやけのえのぐばこ」より)

物語の「テーマ」である「夕焼け小焼け」。窪島さんが絵本を作るきっかけとなった、あるエピソードがありました。


中国・石家荘市の有名な洋画家・鉄揚さん。幼少期、日本軍が攻め込んだ地域に暮らし、長年、窪島さんと親交があります。鉄揚さんが戦後、日本を訪れた時のことでした。

窪島誠一郎館主:「渋谷の交差点で、立ってたら、スクランブル交差点で青信号で流れてきた歌がオルゴールがなんとブルブル震えて(聞いて)いた軍歌だった。思わず通訳の人にまだ日本は軍歌を歌っているんですかって聞いた。いいえ、先生それは違います。日本中の誰もが知っている有名な童謡です」

当時は軍歌だと思い込み、鉄揚さんが恐れた「歌」。しかし、その歌こそが、「夕焼け小焼け」だったのです。


窪島誠一郎館主:「おそらくあの頃の日本の兵隊さんは、夕暮れになると祖国を偲ぶ思いでその歌を歌ってたに違いないんです。恐ろしいもんです。戦争は、あんなのどかな童謡までを軍歌に聞こえさせてしまうのだから」