クマをめぐる事故が頻発している。事故を防ぐにはどのような方策があるのか。北海道の地域で実際に行われている取り組みを通じて、これからのクマ問題を考える。HBC北海道放送デジタル推進部の幾島奈央氏による論考。
住宅地で、仕事中にクマに襲われる
午前3時前の住宅地。「新聞を入れる音がして、まもなくしたら、叫ぶ声が聞こえて、どうしたんだろうと思った。玄関のドアを開けたら、目の前でクマが人間の上に覆いかぶさるような状態が見えて…」
2025年7月12日、北海道福島町で、新聞配達員の男性がクマに襲われて死亡した。目撃した男性は、HBCの取材に「クマが人間を引きずって、やぶの方向に逃げていった」と話した。

私はかつて報道部で道内各地のクマをめぐる問題を取材してきたが、現在は最前線から離れている。その日のニュースで、現場となった草やぶを「クマがいないか確認するため」に刈っている映像を、なぜ今なのかと、呆然と見ていた。クマは身を隠せる背の高い草や川沿いを移動するのを好む。草刈りは本来、クマとの事故を防ぐための「事前の対策」だ。
なぜ防げなかったのか、原因や経緯の検証・今後の対策が急がれる中で、8月14日、知床半島の羅臼岳で、登山中の男性がクマに襲われて死亡した。
なぜ事故は繰り返されるのか。求められる大きな変化と、小さな積み重ねについて考えたい。