■「ウサデン」…新しい安全保障領域の登場

防衛の対象は、もはや陸海空だけではない。

ロシアはウクライナで「ハイブリッド戦」を仕掛けているとされる。
「ハイブリッド戦」とは、戦闘機や艦船による武力攻撃といった軍事手段と、サイバー攻撃やメディアによる世論操作といった非軍事手段を組み合わせた戦法だ。実際にウクライナでは、政府機関などへのサイバー攻撃が確認されており、ロシアによるものとみられる。

従来の領域だけでは防衛を完結できなくなっているのだ。
新しい安全保障の領域とされる宇宙・サイバー・電磁波は、その頭文字をとって「ウサデン」と呼ばれている。
政府は、去年9月に今後3年間を見据えた「サイバーセキュリティ戦略」を策定し、国家の関与が疑われるサイバー攻撃として、中国やロシア、北朝鮮を初めて明記。防衛省自衛隊も、各領域に対応した「サイバー防衛隊」「宇宙作戦群」「電子戦部隊」の編成を進めている。


■自分の国は自分で守る

「抜本的に防衛力を強化し『自国のことは自国で防衛する』。この考え方は正しかったんだと、ウクライナ侵攻という不幸な事態で証明された」
ある防衛省幹部はこのように言う。

政府は防衛力強化のため、「国家安全保障戦略」など防衛3文書の改定の議論の中で、敵基地攻撃能力の保有も含めた様々な検討を行っている。
日進月歩で進化し“目に見えない”領域である「ウサデン」において、後れを取らずに対応していくことは言わずもがなで重要である。しかし、ウクライナの惨劇や、中ロ北の日本周辺での活動に目を向けると、「陸海空」といった“目に見える”従来の領域での防衛も怠ってはならないと強く感じる。クロス・ドメイン・オペレーション=領域横断作戦の実現が不可欠だ。

混迷する国際情勢の中で、現実的に国民を守り抜く防衛力が問われている。

TBSテレビ政治部 防衛省担当
岩本瑞貴