■“上から下まで”脅威に晒される日本 

「安全保障及びエネルギー分野を始めあらゆる分野でロシアとの協力を進め、日ロ関係を全体として高めていく」-
これは2013年に決定された、日本の安全保障に関する基本方針「国家安全保障戦略」の一節だ。約10年の期間を念頭に置いており、現行の戦略となっているが、ウクライナでの惨禍を前に、この方針は見直しを迫られている。

現行の戦略では、ロシアを「パートナー」と位置づける一方、中国と北朝鮮は「安全保障上の課題」と明記されているが、政府は今年、国家安全保障戦略を初めて改定し、ロシアを中国・北朝鮮と同じ「安全保障上の課題」グループに変更することを検討している。

かつての日本は、ソ連の侵攻に備え、北方の防衛を重視してきた。しかし、中国の経済的な台頭や国防費の伸び、北朝鮮の軍事技術の進展などに伴い、その比重は小さくなっていった。実際に防衛省は、中国を念頭に石垣島など南西諸島の拠点を整備し「南西シフト」へと防衛体制の変更を進めてきた。また、北朝鮮を念頭に迎撃ミサイル「PACー3」の改良型「PACー3MSE」の配備などを進めている。

しかし、ウクライナ侵攻を機に状況は一変した。

もはや「パートナー」とは呼べないであろうロシアに、中国、北朝鮮。日本はまさに、日本海側の“上から下まで”脅威に晒されている。


■中ロ艦隊が日本列島を一周

ウクライナ侵攻が始まる前、去年10月。防衛省から衝撃の発表がなされた。
中国とロシアの艦隊が、日本列島をほぼ一周する形で航行したというのだ。

防衛省によると、去年10月18日から23日にかけて、中国とロシア海軍のミサイル駆逐艦やフリゲートなどあわせて10隻が、津軽海峡から伊豆諸島周辺を経て大隅海峡を通過した。これらの海峡はいわゆる「国際海峡」で、軍用を含めた外国船舶の自由な航行が認められているため違法性はない。しかし、中ロのこうした動きを確認するのは初めてのことで、岸防衛大臣は「極めて異例で、我が国に対する示威活動を意図していると考えられる」と強い懸念を表明している。ロシア国防省は同月に、日本海で中国と合同の軍事演習を実施したと公表しており、これらの艦艇も演習に参加していた可能性は排除できない。