「海外ではまず疑いの目で請求を精査する」

 なぜ、このような問題が起きたのでしょうか。中村記者は「言語・契約書の形態・文化などが異なる海外企業との意思疎通が困難だったという面もあるのでは」と見ています。一方、辻岡氏は、こうした日本と海外の習慣の違いについて「性善説と性悪説の違い」だと指摘します。

 (辻岡信也氏)「日本の建設業界は、業界全体で工期を守るという使命を果たしてきたが、海外ではまず疑いの目で請求を精査する。日本のやり方をそのまま海外の工事の契約に結びつけようとすると、今回のようなトラブルになる」

 さらに、今回の未払い問題は「とにかく4月13日の開幕に間に合わせる」という使命感の中で、以下のような要因が影響したと考えられます。

 ▼前回の万博からの期間の短さ
 →新型コロナの影響でドバイ万博の開催は1年延期。
 ▼世界的な物価高騰
 →電気工の日当が当初の1.6万円から最終的に6万円に高騰したケースも。
 ▼デザイン・内容のこだわり
 →SDGsの観点から資材輸入、資材を船便で運搬など。

 また中村記者は、業者側の「国の一大イベントに参加したい」という思いや「国が関わるから安心だ」という安堵感などが、結果としてマイナスに働いてしまった面もあると言います。