「原稿も、リポートも、苦手なんです」。そう話すのは、JNN中東支局長・須賀川拓記者だ。
そんな彼が中東取材を通して変わった。米軍の撤退により混乱を極めたアフガニスタン取材に従事し、タリバン広報官とのインタビューで丁々発止のやり取りを繰り広げる。現地リポートをウェブ配信すると100万単位のアクセスがあり、バズる。そして、2021年度の優れた国際報道に贈られる「ボーン・上田国際記者賞」を受賞した。
一体、須賀川記者に、何が起きたのか。

■「1分の原稿は間違えるのになぜ?」実は苦手だったリポート
ーー「ボーン・上田賞」受賞、おめでとうございます。
いやー、もらって大丈夫かなって。先輩記者に怒られそうな気もします。
ーー受賞あいさつの中で「民衆の声を伝えたい」と話していました。具体的にはどういう意味でしょうか?
複雑なものを複雑なまま伝えると言い換えられるかもしれません。
もともと文章を書くのは好きなんですが、ニュース原稿で簡潔にまとめることが苦手でして・・・。ある現象について時間を気にせず解説、ならしゃべり続けられるのですが、短く原稿にしてといわれると、目も当てられない状況なんです。複雑な要素を簡略化するのはいつも苦労します。

ーーえ、ボーン・上田賞受賞した方が、原稿が苦手ということですか?
悪者が一人明確にいれば、伝えやすいんですが、世の中ってそんなにシンプルではないじゃないですか。パレスチナでも、アフガ二スタンでも、戦争の当事国、攻めるほうも、攻められているほうも、程度の違いこそあれ、どちらも非人道的なことはしています。簡単に白黒つけられない部分があるんです。それを1分の原稿でどうやってまとめるんだよって。まとめられないんです。もちろん、それも仕事でとても大切なんですが・・・。上手に原稿を書く先輩を真似ようとしますが、なかなかうまくいきません。
実は、原稿だけでなくて、顔出しのリポート(ニュースの中で10秒前後で記者がカメラ目線でリポートすること)も苦手です。まず、カメラが苦手なので、目がキョロキョロしてしまうし、原稿通りにうまく話せなくて、語尾がふにゃふにゃしてしまう。
