元作業員を独自取材 笑顔の奥に「頑固さ」
留守番電話のメッセ-ジがやや無愛想だったこともあり、正直返事は期待していなかった。連絡をもらい自宅を訪ねると、彼は笑顔で記者を迎え入れた。大柄でカーキチェックのシャツにサスペンダーが似合う79歳(取材時)。
男性はボーイング社員だった頃の名刺を示し、東京で隔壁の修理を行ったことを認めた。そして、当時の修理指示書を見ながら、記憶をたどるように話し始めた。
「確か、あの時はしりもち事故で、圧力隔壁の下半分を交換したんじゃないか」
フランクな受け答えの一方で、元作業員としての頑固な一面も垣間見えた。男性は、今でも修理にミスはなく、指示通りに作業をしたと主張している。
「誰が言ったか知らないが、私たちは『継ぎ板』を切ったりしていない。切ったんじゃなくて、初めから2枚だったんだ」
さらに、板を2つに切ったのではなく、別の板を足しただけだと説明した。
しかし、日本の調査官が撮影した未公開写真には、2つの板を跨ぐように複数の引っ掻き傷のような痕が写っている。もともと1枚だった「継ぎ板」が切断されたことを示唆するものだ。この傷は「継ぎ板」を作る際に出来たものではないかと、撮影した調査官は話している。またボーイングで事故調査を担当したパービス氏は、修理ミスの背景について、作業者の名前は明かさずにこう証言している。
「担当者は、ただ隙間を埋めればいいという程度にしか考えていなかった」
