
2022年8月、中国との国境から対岸の北朝鮮を見ると、1年前にはなかったスローガンが。「自力更生」「自給自足」という外国には頼らない政策が盛んに叫ばれている。
北朝鮮内部を独自のルートで取材しているアジアプレス・石丸次郎氏に聞いた。

アジアプレス 石丸次郎氏
「食品でいうと砂糖、それから食用油などがもう中国製品が入らなくなって市場から消えてしまったと。一番大きな打撃は医薬品の不足だったんではないかと」
アジアプレスでは北朝鮮の国内にいる協力者に中国の携帯電話を渡して連絡を取り合っている。今週、北部に住む協力者と話ができた。

北朝鮮北部の住民
「周りでは病気だった人が沢山死にました。病気になっても薬がなくて治療ができないから。下痢なんかでも、お年寄りが罹ったら死んでしまいます。薬を何粒か飲めば生きられるのに。1つの人民班(20~30世帯構成)で、平均2人から5人くらいは死んだと思います」
コロナ前の2019年、国連が撮影した北朝鮮の農村部の映像をみると、灌漑用の水路は干上がり、畑は乾燥している。それでも米やトウモロコシを植えるため人々が手作業で土地を耕している。今も状況は悪く、国連は2022年7月に「人口の41.6%が栄養不足」と報告している。

さらにコロナが貧困に追い打ちをかけている。物流や商売の統制が強まったために現金収入がない人が多いというのだ。
北朝鮮北部の住民
「稼ぐことも駄目になり、米もないので、1日2食や1食でしのいでいます。(政権は)全てアメリカのせい、コロナのせいだと言い訳して、人々が生きていくための初歩的なことも保障していないのに『仕事には出ろ』と。本当に馬鹿げています」
金正恩政権が進めるミサイルの開発について、住民の本音が漏れる。

北朝鮮北部の住民
「アメリカまで届く爆弾があっても、私たちを守ろうとやっていることではないでしょう?毎日どうやって生き延びるかを心配している人たちは、国に核やミサイルが必要だなんてことより、いつになったら食べる心配もなく暮らせるか、そんなことばかり考えているんです。お米を配って配給を出してくれれば、どれほどいいでしょうか」
石丸氏は、現状を“人災”だと表現する。
アジアプレス 石丸氏
「北朝鮮当局は今、生活が苦しくなったのはコロナのせいだという形で国民に説明しているそうです。ところがその一方で、莫大なお金を投下して、ミサイルの発射実験をずっと繰り返しているわけです。ミサイル開発の副作用として、やっぱり人民が非常に飢えて亡くなる人が出てきていると。“人災”と言っていいと思うんですよね」
日下部キャスター
「(金正恩氏は)知っているんですよね?」
アジアプレス 石丸氏
「もちろん知らないわけないと思います。もちろん」
国民が困窮する中、推し進められる核・ミサイル開発。その資金源のひとつとして、北朝鮮が世界中から盗み取っているものがあるという。