強気に転じたトランプ政権

そうした「何をやってもうまくいかない」という日々が続いたトランプ大統領だったが、6月後半以降、強気の姿勢を取り始めるようになった。その象徴がイラン攻撃だろう。イランとの交渉が思うような進展を見せない中、バンカーバスターと呼ばれる特殊な爆弾による核関連施設の破壊攻撃に出た。「力による平和」を訴えてきたトランプ大統領が初めてその「力」を行使したのだ。その上で改めてイランに対して「ディール」に応じるよう要求しているが、果たしてイランは応じるのか。今後のトランプ外交の成否を占う試金石となる。

内政面では政権肝いりの「1つの大きな美しい法案」と呼ぶ大型減税法案を成立させた。トランプ大統領は独立記念日の7月4日までに可決するよう議会指導部に要求したものの、共和党内にも反対の声があがって難航が予想されていた。また、この法案をめぐっては5月までは側近だった実業家のイーロン・マスク氏がSNS上で批判を展開し、トランプ氏との亀裂が決定的にもなった。

しかしトランプ氏は内外の批判を封じ、議員に圧力をかけ、自身が決めた締め切り前に可決・成立させることに成功した。内政でも自身の「力」を見せつけた形だ。財政赤字の悪化は大きな懸念となるが、トランプ政権にとっては大きな勝利といえるだろう。

関税交渉をめぐっても、再び強気な態度を見せてきた。日本との交渉では自動車関税の撤廃には応じない姿勢を見せている模様で、相互関税はさらに増やして25%を突き付けてきた。カナダにも35%、ブラジルには50%の関税を課すと表明したが、交渉のための圧力なのか、それとも実際に発動に踏み切るのか。強気のトランプ氏の様子を見て、後者の恐れも十分に考えられる事態になっている。

再び強気のトランプ大統領(6月27日 ホワイトハウスにて)