“不確実性”で米国の「利下げ」に暗雲
一方18日、アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)も現在4.5%としている政策金利を4会合連続で据え置いた。

【FRBパウエル議長 発言要旨】
▼景気見通しに関する不確実性は低下したが依然として高い
▼(物価上昇率は)夏にかけてさらに上昇する見込み
ーーパウエル氏はどちらかというとインフレの方を心配している印象だ
『東京大学』名誉教授 渡辺努さん:
「インフレの数字は徐々に下がり大きな懸念はないわけだが、やはり関税の影響が本格化してくる中で、【関税はインフレ率を上げていく】。また関税に伴い輸入品ではなく国産品に切り替えることによって、【生産の効率が悪くなり物価を上げていく】。この辺をFRBが注視しているのだと思う」
また、利下げについてパウエル氏は「2025年中に2回行う」という想定を示したが、FRBの経済見通しでは、成長率は鈍化し失業率も物価も上昇という“悲観的な状況”を予想している。

【アメリカ 2025年経済見通し】
▼実質GDP:(3月公表)1.7%⇒(今回)1.4%
▼失業率:4.4%⇒4.5%
▼PCEインフレ率⇒2.7%⇒3.0%
ーー政策金利の見通しでも、委員の中で「年2回の利下げ」は1人減少。「1回も利下げできない」は4人から7人に増加している。

渡辺さん:
「FRB幹部の発言を聞くと、インフレ予想がまた高まってしまうのではないか、不安定化するのではないかということを強く懸念しているようだ。なので利下げはするだろうが、今まで想定されたペースよりは、もう少しゆっくりな形になる可能性は強い」
今後「日本が最も望まないデフレ」の可能性も
また渡辺さんは「関税を課す国と課される国では影響の出方が違う」と話す。
▼関税を課す国(アメリカ・中国・欧州)
【物価が上昇】【成長率・雇用が下落】⇒スタグフレーション
▼課される国(日本)
【物価・成長率が下落】⇒デフレーション

『東京大学』名誉教授 渡辺努さん:
「中国やヨーロッパも報復関税があるので関税を課す側。日本は純粋に課される国なので、この差は大きい。課す国は関税に伴って物価が上がり、また全体の生産効率が悪くなるので成長率も下がる。景気が悪くなる中で物価が上がる<スタグフレーション>の状況。一方課される国は基本的には供給サイドの変化はなく需要が変化していく」
ーーつまり、輸出が減ると
渡辺さん:
「輸出減にともない日本国内の需要が減り、物価も下がる。そして成長率も下がる。両方とも下がる方向になっていきデフレというか、いわゆる<ディスインフレ>、インフレ率が下がる現象が起こってくる。日本が最も望んでいない方向に行ってしまう可能性がある」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年6月21日放送より)