狙われた留学生 トランプ大統領の思惑は?

高柳キャスター:
ここ数か月で話題になっているこの問題ですが、実際にハーバード大学に留学をして卒業した当事者である向井さんによると、トランプ大統領が留学生を敵に回すというのは今に始まった話ではないということです。

Nスタディレクター 向井彩野さん:
トランプ大統領が留学生のビザを剥奪したのは実は今回が2回目です。ちょうど私が在学中だった2020年のコロナ禍、トランプ大統領はコロナに対して「99%無害だ」というかなり強いスタンスをとっていました。それに対して多くの全米の大学は、コロナウイルスを脅威と捉え、蔓延防止のために新学期の全ての授業をオンラインで行うといった立場をとっていました。

ただ、このスタンスの違いが自分にとって不都合なトランプ大統領は、大学側に揺さぶりをかけるために、弱者である留学生に対して攻撃をしました。授業が全部オンラインならアメリカにいる必要はないということで、留学生の「ビザ剥奪」を発表します。

私は当時、大学にいましたが、中にいる学生も出て行かなくてはいけない、一旦外にいる学生も戻ってこられないといったことで、キャンパスは大混乱でした。全米各地で裁判に持ち込まれたことでビザの剥奪はなかったのですが、多くの大学でこのときの記憶は今も鮮明に残っています。

実際にトランプ大統領が選挙期間中も移民に対して強硬的な姿勢をとっていたことから、第2次政権が始まっても、また同じことが起きるのではないか、留学生のビザが剥奪されるのではないかという不安が広がりました。それが今年の1月、トランプ大統領の就任の時期です。

今この話題は大きくなっていますが、実は学生の不安は1月から始まっていました。実際、ハーバード大学ではトランプ大統領就任前、冬休み中ということで多くの留学生が一時帰国していた12月に、入国拒否されないよう「就任前になるべく早くアメリカに戻るべき」といったアドバイスも行われていました。その後も留学生向けに「米国外への渡航を控える」「滞在証明を常に携帯」といったアドバイスは継続的に行われていました。

これだけでも正直、居心地の悪い大学生活だと思うのですが、私が取材した学生はさらにSNSの過去の投稿や履歴を全部遡り、アメリカに対して批判的な内容を全て削除したり、アプリそのものを削除している人もいました。

また、アメリカとの関係性が比較的良好ではない中東地域の一部の学生は、強制送還される不安から授業を全てオンラインで受けるといった苦しい状況が1月から続いていました。

井上キャスター:
今はこうなっていますが、向井さんがいたときはどのくらいの感覚でしたか?

向井さん:
バイデン大統領のときは何の心配もなく自由にデモに参加して、自由に登校していました。私のルームメイトはパレスチナ出身の留学生だったので、もし今大学にいたら、その友人のためにデモに参加していていただろうと思うと他人事ではありません。

実際に私が取材した留学生は「厳しい言論統制で何も話せない」と言っていました。この言論統制という重い言葉を若い学生から聞くことが何よりショックでした。しかし、学生たちは世界中でこのテーマについて報道が行われていることを励みに感じているようです。

遠い日本にいる私たちには何もできないように感じてしまうかもしれませんが、こうした彼らの辛い状況に少しでも思いを馳せることが、励みになるのかなと思います。皆さんにもぜひ気にしていただけるとありがたいです。