先週、アメリカ・ハーバード大学で行われた卒業式。卒業生たちが被っていた帽子には「留学生を守れ」の文字が。トランプ政権と対立が深まるハーバード大学。そして、抑圧される留学生の今を取材しました。

トランプ政権×ハーバード大 対立激化

高柳光希キャスター:
トランプ政権とハーバード大学の対立について、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。

事の発端は2023年の10月、イスラエルによるガザの侵攻が始まりました。それに伴い、全米の大学でデモが広がります。そこでトランプ大統領は「大学が反ユダヤ主義を助長している」と批判しました。

標的となったのは、名門ハーバード大学です。トランプ政権は22億ドル、日本円で3100億円以上という助成金を盾に、今年の3月〜4月にかけて、デモに参加した学生の取り締まり強化などを求めました。

しかし、ハーバード大学はそれを拒否したため、標的はハーバード大学の学生たちへと変わります。トランプ大統領は留学生の受け入れ資格停止を求めましたが、ハーバード大学は訴えを起こし、裁判所が一時差し止めを行っています。

要求はどんどんエスカレートしていき、先週、学生ビザ取得のための面接の新規予約を停止しました。これにより、全てのアメリカ留学希望者に影響が出てきました。

つまり、「トランプ政権」対「留学生個人」という非常にアンバランスな構図になっているわけです。トランプ大統領なぜこうした行動に出のでしょうか?

TBS報道局外信部ニューヨーク支局員 窪小谷菜月 記者:
トランプ大統領は、自身が反ユダヤ主義にしっかり向き合っているんだと支持者にアピールする狙いがあります。

そもそもアメリカ社会は豊富な資金力を持つユダヤ系の団体が非常に大きな影響力を持っており、政権に関わらず伝統的にイスラエル寄りの立場をとっていました。トランプ大統領も前政権のときから一貫してイスラエル寄りの政策をとっており、今回の措置もその一環と言えます。

また、トランプ政権が根底に持っている「反エリート主義」も背景の1つと言われています。トランプ大統領は、エリート大学の教育によって多様性の重視を掲げる人、つまり自分の方針とは相反する人が生まれていると大学を非常に敵視しています。

エリート大学には経済的に恵まれている家庭出身の人が多いことから、トランプ大統領の支持層である労働者階級の人の中には、入学の機会が平等でないのではないかといった大学に対しての不満や嫉妬を持っている人が多くいます。

いずれにせよ、支持層に対する自分自身の政策のアピールのために、立場の弱い留学生を狙っているということで現地メディアも批判しています。

井上貴博キャスター:
ある意味、トランプ大統領の政策は一貫しているなと感じる部分があります。反エリート主義に加え、国内の経済格差は移民流入とグローバル主義で起こったのだというロジックでトランプ大統領は捉えている。

今回のケースはまさにそれで、労働者の票が欲しいからこのようなことをやるのですが、結果的に損するのはアメリカなのではないかという気はします。

実業家・インフルエンサー 岸谷蘭丸さん:
トランプ政権の支持基盤は労働者階級だと言われているので、そこに対するアピールは欠かさないんだろうなということもありつつ、個人的に思うのは、まず留学生にとっては本当に大変なことであるのは明らか。私の会社も留学支援や海外大学の受験を考える人がメインなので「今アメリカはやめとこうかな」という人が相当多い。

アメリカにいる知り合いや留学中の友達も沢山いるのですが、帰ってこられなくなるという事態が発生している。要は帰ってきてしまうと再入国ができなくなる恐れがあるんです。ハーバード大学などが代表とされる名門大学の集まりである「アイビーリーグ」というものがあるのですが、そこは特に厳戒態勢です。例えば「インターンが日本で決まっていたけど夏休みに帰れなくなってしまった」とか「旅行に行けなくなってしまった」とか「帰れないから家を探さないといけない」など、結構シビアな問題が留学生には起きていると最近よく見かけます。