◆獄中の松雄 家庭を築いた弟をうらやましく思い

<藤中松雄の手紙 兄へ 1949年8月30日>
二十二日、孝一(松雄の長男)の便りに接し、続いて二十六日、兄の便り拝読いたしました。熊市(弟)が古釘を踏み込んで切開し入院していると、春江(妹)の入院に引き続きの不幸、見舞いの言葉も知りません。なにはともあれ、一日も早く全快の日を祈ります。春江が盲腸を手術し入院しているとの事でしたが、既に退院しては居るとは思いますものの、音沙汰もなく一寸案じられます。こんな事書いておりますと兄から又、取り越し苦労をすると小言を言われるかわかりませんね。熊市も分家してこつこつと基礎を固め、ああ言うたちだから、こじんまりと家も整え、万事ぬかる事なく堅実なる家庭を築き上げ、楽しく暮らしている事と思います。全くうらやましいなア~
民夫もそして兄達も熊市の様に一歩一歩を堅実に踏み締めて佛のみ光りを見失わず互いに励まし励まされつつ、何処までも仲良く悟りの道を踏みあやまらん様、念願してやみません。
◆米の生育に気をかけながら

藤中家は農家なので、松雄は稲の生育の具合を心配している。稲の茎や葉から栄養分を吸い上げ枯らしてしまう害虫「ウンカ」や暴風の被害を気にかけている。
<藤中松雄の手紙 兄へ 1949年8月30日>
稲作の方は大体良好との事ですが、「ウンカ虫」が多いのには一寸懸念されますね。光子からもウンカ虫に困って居ると言って来ておりましたが、今度の大暴風雨できれいに洗い流されはしませんでしたか。そのかわり、水害にあった処も多々あった事でしょう。