去年8月のパリオリンピック™で日本陸上界の歴史に並んだ、男子走高跳の赤松諒一(30、SEIBU PRINCE)。自己ベストを1cm上回る2m31を1回でクリアし、見事88年ぶりの5位入賞という快挙を成し遂げた。世界陸上では22年のオレゴン大会は19位、23年ブダペスト大会は8位と着実に順位を上げ、9月開幕の東京世界陸上ではメダルを狙える位置まできている。シドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子さんが強さの秘密に迫った。
ホテルマン、研究生、アスリートの三刀流
赤松は、現在所属するSEIBU PRINCEで、オフシーズンにはホテルマンとして接客業をこなしている。ホテルマンとしての業務が競技にも活きていると話す。
「海外のお客様とのコミュニケーションは、英語で頑張らないといけないんですよ。そこで鍛えられて海外の友達も出来て、今英語でやり取りしていたりするので。競技自体も審判は英語なのでそれをちゃんと理解して、『今の高さどれぐらいかな』とか審判が言っていることを理解していないと色々不都合が出てくるので、ホテルでの経験は役に立っていますね」
アスリートでありホテルマン、二刀流に留まらず、さらにもう一つの顔を持つ赤松は、忙しい傍ら岐阜大学医学部に通う研究生でもある。研究テーマは歩行と転倒についてだという。
「足の裏のバランスですね。歩いていると、踵から乗り込んで外側を通って拇指球、親指のあたりで抜けていって離地するっていうこういったきれいなカーブの曲線が描かれるんですけど、その曲線がどうなっているかによって、高齢者に限らず人が転倒しやすいかどうかっていうのがわからないかなという、そういった研究をやっています」
パリ五輪前に左足小指の手術
同じ岐阜県出身のジャンパーを高橋さんは『天才』と表現した。実はパリ五輪の5か月前の3月に、左足小指にボルトを入れる手術を行っていた赤松。走高跳に必要な跳躍練習を去年はわずか1回のみで、大舞台に臨んでいた。

高橋:パリ五輪は5位でしたけれども、その時に足の状態は万全ではない?
赤松:なかったですね。行く前も終わった後も「ヒビ入っているね」と言われて。ボルトを入れて5月くらいに治ってきて、かなり傷も薄いなという時に跳躍練習を一回やって。本当に跳んでないですね。
高橋:その中で自己ベスト。その要因は何ですか?
赤松:ケガする前も結構調子よくて。その時にちょうど「こう動けば、自分の体はこう動いてくれるんだ」というのが段々掴めてきたような時期に丁度怪我しちゃったので。そこをずっとやりたいと思って過ごしていたんですけども、それが今回パリ五輪で思い切って助走から踏み切りまでという一連の流れがスムーズに行けて踏み切る事ができたので、今までのベストパフォーマンスが出せたのかなと。それがずっと自分の頭に残っていて、それがやっとできたなっていう感じで。
