石破総理は消費税減税は“見送り”方針 有権者の期待は「食料品の減税」
夏の参院選を控え、物価高対策として野党だけではなく与党からも消費税の減税を求める声が高まっている。ただ各党の主張は微妙に異なっていて、立憲民主党は食料品の消費税を原則1年間ゼロ、日本維新の会は食料品の消費税を2年間ゼロに、国民民主党は時限的に一律で5%に下げることを訴えている。

また、かねてより共産党は「消費税率を5%にして廃止をめざす」、れいわ新選組は「消費税の廃止」を訴えている。
以上のことからJNN世論調査では消費税の扱いについて、「維持」「廃止」「食料品減税」「一律引き下げ」の4択で聞いたところ、結果は多い順に以下の通りだった。
▼「食料品の税率を下げるべき」35%
▼「一律で税率を下げるべき」 27%
▼「いまの税率を維持すべき」 19%
▼「消費税は廃止すべき」 16%

一方、忘れてはならないのは消費税を減税することで失われる税収だ。財務省は食料品にかかる税率をゼロにすることで年間5兆円、国民民主や共産が主張する一律5%への引き下げで年間15兆円税収が減ると試算している。
消費税は医療、介護、年金、子ども子育て支援など全世代型社会保障制度を支える財源となっているため、減税により失われる財源を補填しなければ社会保障の質が低下する恐れがある。その点不安がないか聞くと、55%が「不安を感じる」と回答した。減税のうち財源が最も少なくて済む「食料品の税率引き下げ」を選ぶ人が35%と最も多いが「税率維持」も20%近くいるのは「不安」の裏付けではないかと考えられる。

こうした中、石破総理は今回物価高対策として消費税の減税を行わない意向を固めた。
5月8日夜、都内の日本料理店で石破総理と森山幹事長が会談した。今後の政権運営について意見を交わしたほか、消費税の減税は行わない方針を確認したものとみられている。
実施しない最大の理由は財源で、財源の裏付けのない減税は国際的な信頼を失うとの懸念がぬぐえなかった。石破総理としては物価高の影響が大きい低所得者への支援を厚くすべきと考えているものの、依然として与党・公明党は「経済対策の骨格は減税だ」との主張は堅持し、夏に選挙を控える参院自民党からは減税を求める声は上がり続けている。今後は党の税制調査会で消費税に関する勉強会を開き、この場を利用して自民党執行部としては減税派の主張を抑える狙いがある。参院選にむけて今のところ目玉政策がなく焦る参院自民や公明党を押さえ込めるか、そして何より物価高に苦しむ国民に有効な対策を打ち出せるか、総理の手腕や調整力が求められている。
