中国のサイバー戦能力と台湾への警告
日本の防衛省が昨年7月に発表した防衛白書には、「中国では、サイバー戦部隊が2024年に再編された可能性が指摘されている。なお、2024年以前のサイバー攻撃部隊は3万人との指摘もあった」「中国が2019年に発表した国防白書において、軍によるサイバー空間における能力構築を加速させる――としているなど、軍のサイバー戦能力を強化していると考えられる」との記述があります。
中国が今回、「台湾のサイバー戦部隊の中心人物」とする4人を公表したのは、以前から把握していた情報をあえて公開することで、台湾当局だけでなく、台湾住民に対し中国の情報機関の能力を誇示し、畏怖させようとする意図があるでしょう。同時に、中国国内の一般市民に対し、「サイバースパイ活動の疑いがある場合」の通報を呼びかけることで、台湾の民進党政権への警戒感を煽っています。
さらに、中国側は台湾のサイバー戦部隊について、「台湾の民進党政権の指示を受け、台湾独立を目論んでいる」と指摘し、「必要なすべての懲罰措置を取り、法律に従って生涯にわたり、責任を負わせる」と警告しています。
これまで、中国からのサイバー攻撃はアメリカに対するものが注目されることが多かったですが、中国と台湾の間でも、情報活動を巡る対立が激化している現状が浮き彫りになりました。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める