国際社会の先頭で、水銀による環境汚染や健康被害のない世界の実現へ
(以下、全文)
令和7年度 環境大臣「祈りの言葉」
水俣病によって、かけがえのない命を失われた方々に対し、心から哀悼の意を表します。
また、大変な苦しみの中でお亡くなりになられた方々や、その御遺族、そして健康被害や地域に生じた軋轢などに苦しまれてきた皆様に対し、誠に申し訳ない気持ちです。政府を代表して、水俣病の拡大を防げなかったことを、改めて衷心よりお詫び申し上げます。
水俣病犠牲者慰霊式が、今年度も無事開催に至り、私自身も環境大臣としてこの場に参列させていただくことができたことを、大変感慨深く思っております。
実行委員会の皆様をはじめ、開催に向けて準備を進めてこられた地元の関係者の皆様の御努力に感謝申し上げます。

昨日、ここ水俣の地を訪れ、水俣の自然と不知火海の美しさ、雄大さを肌で感じるとともに、水俣病の被害を受けた方々のお話を聞かせていただき、今この場に立たせていただいております。この美しく豊かな自然が汚染されて甚大な被害が生じ、平穏な地域社会に長年にわたる不幸な亀裂がもたらされたことに、深く思いを致さずにはいられません。多くの方々の御努力によってこの美しく豊かな環境が取り戻されたことを実感し、水俣病のような悲惨な公害を二度と繰り返してはならない、豊かで美しい自然環境をしっかりと次の世代に引き継いでいかなければならないと、環境大臣としての役割を改めて認識し、強く決意いたしました。
環境省では、これまで、多くの方々の御協力を得ながら、水俣病に関する補償や救済に努めるとともに、胎児性・ 小児性患者をはじめとする方々の日々の生活の支援や、地域 社会の絆を取り戻すいわゆる「もやい直し」に全力で取り組んでまいりました。
1956 年の水俣病公式確認から、今年で 69 年という月日が経過し、来年は70年を迎えます。私たち一人一人が水俣病と向き合い、国の内外の多くの方々、次の世代の方々に、水俣病の歴史と教訓を伝え引き継ぐため、そして今の美しく豊かな自然を取り戻した水俣の姿に関心を持っていただくために、引き続き地域の皆様の声に耳を傾け、関係自治体や地元企業、地域づくりに尽力されている多くの皆様とも協力しな がら、この節目の年を迎えられるよう、全力を挙げてまいりたいと考えています。
長い年月の経過により、水俣病の被害を受けた方々やその御家族の方々なども少しずつ年を重ねられる中、皆様が、将来にわたり地域で明るく安心して暮らしていける社会を実現していくことが重要です。関係自治体や地域で日々努力さ れている医療・福祉関係の皆様などとも協力しながら、引き続き一つ一つの取組を着実に積み重ね、医療・福祉の充実に努めていきたいと考えています。
また、水俣病のような悲惨な公害が、世界のいかなる国においても繰り返されることのないよう、国際社会が一丸となって水銀対策に取り組むため、2013 年に採択された「水銀に関する水俣条約」は、152 に及ぶ国と地域が締結するに至っ ています。我が国は、世界で悲惨な公害が繰り返されることがないよう、語り部の方々をはじめとした多くの方々の御協力に基づいて我が国の歴史と教訓を世界に発信し、国際機関とも連携しつつ、数多くの二国間・多国間協力事業を行い、 積極的に世界の水銀対策に取り組んでいます。
引き続き、水俣病の経験と教訓を世界に発信し、国際社会の中で先頭に立って、水銀による環境汚染や健康被害のない世界の実現に向けて取り組んでまいります。
水俣には、水俣の地を愛し、誇りを持ち、地域の発展と安心を目指して、様々な形で日々努力されている方が多くいらっしゃいます。
そうした地域の皆様の想いが、美しく豊かな自然と文化とともに、将来世代にしっかりと引き継がれていくよう、国として、地方公共団体、経済界、国民の皆様とともに、持続可能で安心して暮らしていける社会の実現を目指して、全力で取組を進めていくことを誓います。
結びに、改めて、水俣病の犠牲となりお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、水俣の地に暮らす皆さまの「もやい直し」に取り組んでいくことをお約束し、私の「祈りの言葉」とさせていただきます。
令和7年5月1日 環境大臣 浅尾 慶一郎














