大学の目の前に弾薬庫が
西日本の急速な軍事化に危機感を強めている各地の人たちが2月、「戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク」を発足させ、初めて開いた集会が4月20日だったのです。集会では、九州各地からの報告がありました。たまたま、亘さんのように特集の執筆を担当した人たちも来ていました。
平和を求め軍拡を許さない女たちの会 熊本・事務局長 海北由希子さん
「南西シフトになって、司令部が熊本の西部方面総監部にあります。町の中の、健軍駐屯地の中の一部が、西部方面総監部です。それが、地下化されようとしています。3年前の予算では、1億円と計上されていました。何のことかよく分からず、その次の年は5億円になりました。そして今年、355億円です。来年はどうなるのだろうか。これは、単に地下化するだけの分の予算です。」
大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会・運営委員 池田年弘さん
「大分市のほぼ中央にある陸上自衛隊大分分屯地で、計9棟の大型弾薬庫の建設が始まりました。また、湯布院には、各地のミサイル連隊に指令を出し、戦争の火ぶたを切る第2特科団も配備されています。九州への長射程ミサイルの配備は、湯布院と熊本がターゲットになっています。」
私は福岡にいて、あまりよく分かっていませんでした。西部方面総監部が地下に移されようとしていること、大分で弾薬庫9棟の建設が始まっていること。大分の弾薬庫は、大分大学の真ん前にあります。『地平』を読んで知ったのですが、集会で実際に話を聞き、いろいろな地域からの報告をまとめて聞くと、「九州はこうなっているのか!」と感じました。
会場には「防衛力の増強に反対」という人がもちろん多いんですが、そうではないという考えを持つ人も世の中にはいっぱいいると思います。ただ、「沖縄は、日本を守るために一定の負担をすべきでしょう」と言っていた九州の方々が、実は東日本からは「九州は当然、一定の負担をすべきだよね」と言われる側になっていることを実感した、という感じです。それはそれで、知らないといけないことだと思いました。
南西諸島の気持ち「身にしみた」
会場で面白いなと思ったのは、「日の丸」を掲げた人がいたことでした。
旗を掲げていた男性
「『日の丸』アピールは大事だと思いますね。いろいろ考えると、憲法の精神と、日本の文化そのもの、伝統は一致しているんじゃないか、と。今の軍拡の流れ、早く言えば、アメリカにそそのかされてやっているようなものですからね。」
「日の丸」と一緒に、「PEACE」と書いた短冊も掲げていました。いろいろな人がいて、いいなと思いましたし、日本を大事にするからこそ軍備に反対するという考え方も、なくはないよな、とお話をうかがいました。
大分県中津市の梶原得三郎さん(87歳)は、集会からデモにかけて3時間近くあったのに、立ちっぱなしで参加していました。「さすがにもう限界ですよ」と笑っていましたが。いろんな意見があっていいと思うんです。「陸上自衛隊の増強は当然だ」と言う人もいるでしょうし。ただ、私たちは、基本的に自分の放送エリアのことしか放送していないし、他のエリアのことが分かっていません。
まとめて見ると、例えば『地平』という月刊誌を見て、初めてこうなっているんだなと分かります。(系列の)TBSを通じて全国放送する機会を得て「まとめてやってみるべきではないか」とも思いましたし、新聞社もそういう機能をもっと果たしていった方がいいんじゃないか、と思いました。
梶原さんは、南西諸島の方々のメッセージを聞いて「身にしみた」と話していました。この「身にしみた」という言葉は、とてもいいなと思います。私たち自身も、立場に関わらず、身にしみたという感覚を持って、ニュースを制作、放送したいと思いました。
◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年生まれ。学生時代は日本史学を専攻(社会思想史、ファシズム史など)。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。東京社会部勤務を経てRKBに転職。やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材にしたドキュメンタリー映画『リリアンの揺りかご』(2024年)は各種プラットフォームでレンタル視聴可能。最新作『一緒に住んだら、もう家族~「子どもの村」の一軒家~』(2025年、ラジオ)はポッドキャストで無料公開中。














