「半分死んだ街」がラピダスで一変
「ラピダス様様だ」
こう話すのは、千歳市内にある喫茶店のマスター、鈴木英範さん84歳だ。
こだわりのコーヒーを目当てに多くのファンが通う『東亜珈琲館』を営みながら、街の変化を見続けてきた。

鈴木さん(84):
「1974年の開業当時は、米軍の残留組がいて当時レートが1ドル360円。米軍の方はやっぱり景気がよかった。チップを置いていって、夜掃除するとチャリンチャリンって(笑)」

しかし活気にあふれていた千歳市は、バブル崩壊以降衰退を続け街の中心地はシャッター商店街となり徐々に寂れていったという。
鈴木さん(84):
「昔なんか街が半分死んでいた。もう開発されないのかと思ったけどラピダスでいっぺんに変わった。ラピダス様様だ(笑)。今自分でやっていて楽しい。体がもつ限りはやっていたい」

ラピダス期待で“強気”の値段設定
千歳市の繁華街でも、新規オープンする飲食店が出始め活気を取り戻しつつある。

2年間空き店舗だった物件を全面改装し、それまで周辺になかった洋風バルを始めた高野さん。地元の食材にこだわり、客単価は市内では比較的高い5000円ほどに設定した。

『Eclat Clara』高野義広店⻑:
「ラピダス関係で人口というか千歳に来る人も増えて、それに合わせてお客さんが来てくれればいい」
市民の中には「色んな人が来て街並みが変わっていくのでは」という不安の声もあるというが、前向きな意見も多い。
60代男性:
「急に固定資産税が高くなるわ、なんじゃこりゃって思ったけどラピダスが来て先があるなと、希望は十分あるなと思う」
「台湾リスク」で海外からの期待も大
大きな期待が寄せられているラピダスだが、まだ最先端の「2ナノ半導体」の試作品ができたわけではない。
半導体産業に詳しい専門家は、最先端半導体の量産化について“不確実な部分”が大きいと話す。

『オムディア』南川 明さん:
「少量の生産はできると思う。ただ何百万個と作るのは、歩留まり(完成品の割合)を上げていかないといけないので、100個とか200個作る技術とは全く違う製造技術が必要になってくる。量産ができるようになるには、ちょっと時間がかかるかもしれない。そこでインテルもサムスンもみんな苦しんでいる。TSMCはだいぶそこが上手い」
一方で、日本のラピダスが最先端半導体の生産技術を確立することには、大きな意義があるという。
南川さん:
「今はTSMCが1強になっているので、顧客たちはもう1社は欲しいと考えている。1つの会社に頼っていると価格もなかなか下がらないし、思うように数も確保できない。さらに中国による台湾リスクがあるので、どうなってしまうか分からない。それを少しでも和らげることができるので、ラピダスへの期待は海外からも大きい」