目標は3年で倍!~「なきゃ困る」存在へ~
境 TVerの今後の目標について教えてください。電通発表の「日本の広告費2024」では「テレビメディアデジタル」の数字が600億円を超えていました。
蜷川 今の4000万MUBとか、600億円のビジネス規模で終了というわけにはいかないと思っています。その倍とか3倍ぐらいに達すると、放送が減っていく分をターンオーバーできる大きさになるはずです。3年で倍ぐらいのスピードがないと厳しいと思います。
今でも世の中に一定のインパクトはあるけど、今の規模ではダメだとの危機感を持っています。ユーザーから見て「なきゃ困る」存在になる必要があります。
境 3年で倍!いいですね!見出しにさせてもらいますよ!コンテンツ面での課題はありますか?
蜷川 例えばいま長時間のバラエティが多いですね。リアルタイムにテレビの前にいる視聴者向けに、放送の視聴率を取ることにオプティマイズ(最適化)されているからです。でも、TVerではどう見せるのか?視聴デバイスに応じて、AIか人手をかけて短くするのか、それともそのまま長時間見てもらうのかなど、考えなければならない課題です。
境 番組制作のイノベーションも必要だということですね。
蜷川 放送がどんどん弱くなっていけば、長時間引っ張る手法にも限界が来ます。そこにイノベーションが起こるタイミングが、これから3年の中で絶対来ると思います。
TVerに限らずネットでどんなコンテンツが流通するのか。いまの放送コンテンツを見せやすくすることから、放送での番組の作り方そのものを変える発想に変わると思います。
インタビュー後記…テレビコンテンツの新しい流通の形作りへ~TVerのさらなる挑戦に期待~
メディア環境の大きな変化の中で、TVerは単なる見逃し配信サービスを超えて、「なきゃ困る」存在になることを目指している。そのためには、コンテンツの作り方自体からイノベーションを起こしていく必要があることも蜷川氏の話から感じた。
10周年を迎えるいま、TVerは日本のテレビコンテンツの新しい流通の形を作るべく、さらなる高みへ上ろうとしている。そのための課題やハードルを乗り越えて、力強く成長することを期待している。テレビビジネス再成長の核になるべく、蜷川氏にはこれからますます、頑張ってもらいたい。
〈蜷川 新治郎(にながわ・しんじろう)氏の略歴〉
1971年 東京都中野区生まれ
1994年 日本経済新聞社入社 インターネットサービスの開発を担当
2008年 グループ会社であるテレビ東京への長年にわたる異動希望かなわず「日経一回辞めて、テレ東へ転職」。インターネットサービス全般の企画開発、システム構築を担当
2013年 グループ内インターネット事業を統括する「株式会社テレビ東京コミュニケーションズ」を立ち上げ。他局などとの共同プロジェクトの立ち上げに参画(TVer、Paraviなど)
2019年 「株式会社TVer」立ち上げ企画書原案を提出
2020年7月 「株式会社TVer」立ち上げ、取締役に就任。TVer事業の統括責任者に
2023年6月より常務取締役(現職)
〈聞き手の略歴〉
境 治(さかい・おさむ) メディアコンサルタント/コピーライター
1962年 福岡市生まれ
1987年 東京大学を卒業、広告会社I&Sに入社しコピーライターに
1993年 フリーランスとして活動
その後、映像制作会社などに勤務したのち2013年から再びフリーランス
現在は、テレビとネットの横断業界誌MediaBorder2.0をnoteで運営
また、勉強会「ミライテレビ推進会議」を主催
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。














