人権デューデリジェンスと「横並び」意識

その背景には、取引先にも幅広く人権順守を求める「人権デューデリジェンス」(企業が自社の人権リスクを評価し、防止・軽減策を講じること)を企業がすでに実践し始めたことがある。

一昨年表面化した旧ジャニーズ事務所の性加害問題で、すでにCMを停止するなどの経験があり、企業にはその実践が強く求められるようになっていた。

「人権方針は昔からありましたが、行動という意味で実際に公に動いたのは旧ジャニーズ問題が最初だったと思います」(A社)

この企業は常時、SNSのモニタリングを行っていて、「なぜこのタレントを使っているのか」、「このCMは不適切ではないか」といった批判の声をチェックしているという。  

こうした人権意識の高まりを動機とする企業がある一方で、「経団連のトップを輩出する日本生命の動きは気にした」、「トヨタさんがやるならうちも」という横並び意識、同調圧力が働いた企業が多いのも事実だ。

別の企業(B社)の広報担当者は、「業界的な横並びですよ。対応が遅れると、批判されますから」と本音を語った。他社の動きを窺いながら、難しい決断を迫られた企業も多いことが伺える。