“物言うスポンサー”の登場  

こうした中で、注目すべきはキリンホールディングスの動きだ。フジテレビが改めて開いた“やり直し会見”を受け、翌日、フジテレビに対し、「人権侵害に対しての疑義が解消されたわけではなかった」と指摘。その上で、広告代理店を通じて、①第三者委員会による調査への全面的な協力および迅速かつ的確な情報開示、②調査の結果、人権侵害があった場合、被害者への救済や原因の解明、再発防止策の策定などを行うよう、フジテレビに申し入れたのである。“物言う株主”ならぬ、“物言うスポンサー”の登場だ。

スシローの過剰反応~世論・SNS対応の難しさ~

一方、今回の騒動では、SNS上の反応を過度に意識した企業の対応が、かえって混乱を招いたケースも見られた。その一例が、大手回転ずしチェーン・スシローの対応だ。

笑福亭鶴瓶さんが1月下旬週刊誌で、中居氏のトラブル直前に中居氏の自宅で開かれた食事会に同席していたと報じられたことを受け、スシローは公式サイトから鶴瓶さんのCM動画や画像を一時的に削除した。

しかし、その後、「過剰反応だ」という批判が寄せられることになり、スシローも鶴瓶さんに謝罪し、CMを再開した。この一件は、企業がSNS上の炎上リスクを恐れるあまり、過剰な対応を取ってしまうことの危険性を示している。

こうした、SNS上での批判への企業側の敏感さは、特定の個人や組織を非難し、排除しようとする「キャンセル・カルチャー」の傾向が助長していることも否定できない。

E社の宣伝担当者は、「フジテレビさんがどんなに変わろうと、消費者が納得してくれなければ、CMを再開しても逆風にしかならない」と、世間の反応への懸念を口にする。