フジテレビの一連の問題をめぐって調査を続けている第三者委員会の報告書とりまとめの目途となっている3月末が迫ってきた。この問題に火がついて以来続く、フジテレビのオンエアから企業CMがほとんど消えるという異常事態はこの報告書を機に解消に向かうのか。企業側の本音などを取材してきたTBSテレビ報道局経済部の片山薫デスクが考察する。

日本のテレビ史に残る“企業CMの一斉撤退”

マッチ(近藤真彦さん)が聴力検査を呼びかけ、ゆうちゃみが災害への備えを訴える…。1月から続く、フジテレビの「ACジャパン」へのCM差し替え。放送を見るたびに、複雑な感情に襲われる。公共性の高いCMはどれも面白く素晴らしいのだが、テレビ局員にとっては「まだスポンサーはフジテレビを認めていない」という事実を思い起こさせるからだ。

中居正広氏の女性トラブルに端を発した、フジテレビでの“企業CM一斉撤退“は日本のテレビ史の中でも最大級の出来事の1つとなってしまった。この前代未聞の現象は、一体なぜ起きたのか。企業側のどんな判断があったのか、これまでの取材を基に、まずその背景を整理しておきたい。  

CM停止は「“会見”前にほぼ決めていた」

日本生命、トヨタ自動車などの巨大スポンサーが、提供番組だけでなく、フジテレビ全体へのCM出稿をすべて見合わせるというニュースが飛び込んできたのは、今年1月18日。フジテレビの最初の“パラパラ漫画のような会見“の翌日だった。

当日の担当デスクだった私は、正直なところ、すぐには事態を飲み込めなかった。「一部の番組提供を見合わせるならまだしも、フジテレビ全体のCMを見合わせるなど、即断できることではないはずだ…」。しかし、私の認識は甘かった。

週明け、想像をはるかに超えるスピードで事態は悪化していく。「見合わせ企業は10社」「20社」「いや、30社だ…」。時間を追うごとに原稿を書き換えざるを得なくなった。

後から聞けば、多くの企業はフジテレビの最初の会見の前に、水面下で対応を検討していたという。港社長(当時)のテレビカメラ抜き会見は、“最後の一押し”に過ぎなかったようだ。

大手企業A社の広報担当者は、取材にこう語った。

「フジテレビの最初の会見の数日前には、弊社の人権方針に照らして差し止めの方向で社内の協議はほぼ終わっていました。フジテレビの会見はダメ押し程度。広告会社とも方向性は共有していましたし、他の企業も差し止め方向で動いていると聞いていました」