フジテレビの対応が招いた危機  

ただ、事態をより深刻化させたのは、フジテレビ自身の一連の対応だった。 当初、フジテレビは社長の定例記者会見の延長として、テレビカメラを入れない形で説明を行った。この対応にC社の広報担当者は、こう憤った。  

「うちが不祥事を起こしたら、フジテレビは真っ先に社長会見を求めてくるだろう。なぜ、自分たちは会見を開かないんだ?」  

テレビ局は企業の不祥事を追及する。しかし、いざ自分たちのこととなると、途端に口を閉ざす。そんなダブルスタンダードが、スポンサー企業の不信感を増幅させた。

批判を受けて、翌週行われた異例の10時間の“やりなおし会見”。フジテレビの港社長(当時)は、「人権意識が足りなかった」と謝罪。コンプライアンス部門への情報共有がなかったことなど「ガバナンスの欠如」を認めざるを得なかった。  

また、「人権侵害の可能性」を認識しながらも、中居氏の出演番組を存続させていた事実が明らかになった。フジテレビの親会社フジ・メディアHDは2023年に人権方針を掲げていたが、実践に至っていなかったといえよう。

この対応は、被害者女性へのケアよりも、人気タレントとの関係を優先させたのではないかという疑念をスポンサー企業に抱かせた。

D社の広報担当者は、こう言い放った。

「まさかあそこまで、タレント優先とは驚いた。人権侵害の可能性を認識していながら、なぜ番組を続けるんだ?理解に苦しむ」