“トランプ関税”二転三転 理由は?政権内で何が…

この背景についてワシントン支局の涌井記者に話を聞く。

――関税政策が二転三転してるのは、なぜか?

ワシントン支局 涌井文晶記者:
一つの要因は、産業界から救済を求める声が相次いだということ。4日、フォードなど自動車のビッグスリーの経営トップがトランプ氏に直接救済を求めて、自動車を関税の対象外にするということが決まった。すると今度は農業関係者から肥料を対象外にしてほしいという悲鳴が上がり、結局、幅広い品目を例外にするという決断になった。産業界の悲鳴は事前に予想できたが、その声にどの程度耳を傾けるべきかということで政権内で関税強硬派と穏健派の綱引きが行われていて、それが方針の二転三転に繋がったのではないかという見方が出ている。

メキシコやカナダへの25%の関税といった政策は強硬なMAGA派として知られるホワイトハウスのナバロ上級顧問が主導してきた。一方で関税の例外措置の調整は商務長官のラトニック氏が中心となった。ラトニック氏はウォール街の経営者出身で、ナバロ氏に比べてビジネス界に配慮する穏健派と見られている。今後もこうした綱引きの中で政策が二転三転するということは予想される。

――次の大きな山場は4月2日に予定されている相互関税の発表。日本への関税政策は?

ワシントン支局 涌井文晶記者:

トランプ大統領は4月2日に相互関税など詳細を発表すると言っている。そこに向けて調整が進んでいくが、日本からは来週、武藤経済産業大臣がワシントンを訪れてラトニック商務長官らと会談する。それで鉄鋼や自動車の関税などで日本を除外してほしいと求める方針だ。ただ2月には、アメリカ政府高官が日本は非関税障壁が高い国だと名指しで問題視する発言もしており、トランプ政権で「日本を除外してください」と求めれば、代わりに「日本は何をしてくれるのか」という反応が出てくることは十分予想されるので、難しい交渉になるのではないだろうか。

関税リスクで株価下落 NY市場参加者の見方は

続いて、トランプ関税に連日振り回される形になっている市場の受け止め方について、ニューヨークに拠点を置くヘッジファンド、ホリコ・キャピタル・マネジメントの堀古英司氏に話を伺う。

――ニューヨーク株が今週は大きく下げた。“トランプ関税”による不安感からか?

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
トランプ氏がいろんなびっくりすること言ってくるだろうとは予想されていたが、本当に連日びっくりする。投資家からすればとりあえず株を持っておくよりも、一旦売って、様子を見守るという姿勢になりがちだ。

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
それから景気の方だが、「GDPナウ」という今の経済成長率をリアルタイムで予測する指標があるが、これが3年ぶりにマイナス成長になりそうだ。一つは政府支出がかなり削減されるので政府関係者の消費者としての不安心理が反映されていること、そして関税が発動されると輸入が高くなるので、それまでに輸入をしておこうという思惑があり、これによって短期的に輸入が増えると経済成長の下押し要因になる。こうした特殊要因で今マイナスになっているが、マーケットはそれを特殊要因と見る余裕がない状況だ。

――トランプが勝つと株価が上がるとされた。市場はあてが外れた形になっていないか?

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
第1期目が、トランプ氏が大統領選挙で勝ってほぼ1年強ずっと上がりっぱなしだったので、それを想定して、もう短絡的にトランプ氏が大統領選挙で勝った後に買った人がいるかもしれないが、株式相場はそんなに単純なものではなく、そういうことで買うと、こうやって調整される。むしろ調整されることが健全だと考えている。しかもファンダメンタルズ的に悪化しているというよりも、特殊要因で悪化してるので、長期の投資家にとってはそんなに怖くないレベルに来ている。

――景気が悪くなり関税不況やトランプ・スタグフレーションになるまでは至らない?

ホリコ・キャピタル・マネジメント 堀古英司氏:
はい。根本的な問題として、例えばアメリカは貿易赤字も、財政赤字もかなり大きいが、放っておく方が国際金融市場が不安定化するので、ここで手を打っているというのはむしろ評価すべきだと思う。ただ、短期的にはやはり足元で表れてるように、政府支出が削減されればその分景気はへこみ、それから関税が引き上げられれば、その分消費者も財布の紐を締めるだろう。今日8日、ベッセント財務長官が、これを解毒の期間「デトックス・ピリオド」という表現をしている。まさにその期間に今入っているのではないか。