高額療養費制度見直し「反対56%」から見えてくるもの

維新との「高校授業料無償化」、国民民主との「103万円の壁の見直し」協議と並行して予算審議の中で炙り出された問題が「高額療養費制度」の負担額の引き上げだった。厚労省は制度の見直しについて、現役世代の保険料負担を軽減するためと説明していた。しかし自身もがん治療を経験した立憲民主党・酒井菜摘衆院議員が、涙ながらに負担額引き上げの凍結を求めた予算審議の中で、がん患者など当事者の意見も聞かず進めていたことが明らかとなり、引き上げを見送る動きが一気に加速した。

この制度の見直しについての賛否を聞くと、「納得できる」は「十分」と「ある程度」をあわせて42%、「納得できない」は「あまり」と「全く」をあわせて56%だった。

ただ、こちらも世代別につぶさに分析すると、傾向が異なる。
調査では「十分納得できる」「ある程度納得できる」「あまり納得できない」「全く納得できない」の4択で聞いたが下の表では、「十分」と「ある程度」を「納得できる」に分類した。「納得できない」も同様。

【世代別】   「納得できる」  「納得できない」
18歳~29歳      51%      45%
30代        39%      60%
40代        39%      61%
50代        43%      55%
60歳以上       40%      55%

予算審議の中で、野党や一部の与党から「見直しは国民の理解が得られていない」との声があがっているが、この結果だけ見るとそうも断言できない。現役世代の負担増が見込まれることから、30代未満の若者世代の理解は相対的に進んでいるし、がんになる率が急激に高くなる50歳以降の世代でも、見直しに40%以上が理解を示している。
この数字をみた官邸幹部は「極端に偏った意見じゃなく、正直ほっとした。やはり苦しくても決めないといけないことは決めるというのが長の役割だ」と話した。

この数字について様々な見方ができると思うが、少子・高齢化、医療の発達による医療費や高額医薬品の増加傾向は、避けられそうもない事実であり、政府も制度を維持するためには負担額の見直しが必要、現役世代の負担が膨らむ一方だと説明する。
ただ問題なのは、圧倒的に説明が足りなかったということだろう。当事者との対話など十分な理解が得られないままに進めたことが、結果的に大きなブレーキとなった。
与党・公明党からも「国民の理解が十分になっていない」と指摘され、石破総理もこう反省を口にした。

「増大する高額療養費をそれぞれの方々の能力に応じてどのように分かち合うかということに対して答えを出していかなければならない。私どもとしても、丁寧な御説明が十分ではないという反省は持っておるところでございます」(3月6日石破総理)