オデーサ歌劇場 節電のため電気・暖房なし 自然光を頼りに舞台上でリハーサル
吉田さんはキーウだけでなく、オデーサの歌劇場も同様に厳しい状況にあると話した。
指揮者 吉田裕史さん
「少なくとも私が劇場の中で歩いた場所では、暖房はきいてないですね。今も劇場内は寒いですよ。(外と)ほぼ変わらないですね」
歌劇場の中からコートを着た状態でインタビューを受けてくれた吉田さん。暖房だけでなく照明も使わず、劇場のステージの裏側にある窓から入ってくる外の光を使って、リハーサルを行っていると言う。
指揮者 吉田裕史さん
「今はとにかく節電のためにお客様が入ったときしか電気は使わないんです。つまりコンサートの本番、オペラの本番、バレエの本番のとき以外は、劇場全体に明かりを入れるってことはしてないんです、できないんですね。なのでリハーサルはとにかく日が出ている昼間にやるというスケジュールになっています」

「音楽が必要とされている場所だから」オデーサで音楽を続ける理由
ドローンなどによる攻撃が続き、照明や暖房をつけられない状況にあっても、オーケストラは休むことなく、練習や公演を続けている。来日公演のために「普段の3倍、4倍の時間を使って、リハーサルが進められている」と話す吉田さん。
オーケストラのメンバーの変化について尋ねると、徴兵されたり、やむを得ない事情で国外に退避したりと、様々な理由でオデーサで音楽が出来なくなった人が多くいると答えてくれた。ただ、一度引退した年配の方や音楽学校を出て間もない若者が入ることで、劇場の音楽は続いているのだという。
爆撃のアラートによってリハーサルを中断せざるを得ないこともあるが、オーケストラのメンバーは「この話題になると、みんな笑顔になって、本当に毎日真剣に集中して、日本でいい演奏をしたいっていう思いで、いつになくいい練習ができている」と語る。
オデーサでオーケストラなどのメンバーとともに音楽を続ける理由について、吉田さんは「音楽が必要とされている場所だから」と戦争が続く地での音楽の重要性を強調する。音楽によって、「人々は勇気づけられて、希望を感じて、心が癒されて、つかの間の幸せを感じるわけだから」と話し、音楽を生み出すことが音楽家としてのミッションだと熱く語った。
指揮者 吉田裕史さん
「とにかく私は指揮者として、自分と一緒に演奏するこの音楽家たち、今この戦争という状況にありながら、可能な限り市民のために演奏し続けているその同僚の音楽家たちと、私の解釈、私の理想とする音楽にとにかくベストを尽くして演奏する。それを日本の人たちに届けるということです」