芸術性と娯楽性

小説には芸術性を重視した純文学と娯楽性を主眼にした大衆文学がある。制作者の中にはドラマも純文学系と大衆文学系に別れると考えている人がいる。『早春スケッチブック』などの山田作品の大半は純文学系だろう。

小説の純文学と大衆文学について、どちらが上かを決めるのは愚かだ。ただし、売り上げは大衆文学のほうが勝るというのが一般的だろう。取っつきやすいことも理由ではないか。

ドラマも娯楽性の強い大衆文学の作品のほうが、視聴率が高くなる傾向がある。その世界に気軽に入りやすいことなどが理由ではないか。ただし、ドラマの場合も純文学的なものと大衆文学的なもののどちらが上かは決められない。

大衆文学系ドラマの近年の代表作はTBS『VIVANT』(2023年)に違いない。個人視聴率の平均値は9.1%で、世帯平均14.1%。突出した数字だった。

息詰まる展開の連続で片時も飽きさせなかった。考えさせるドラマだった『早春スケッチブック』とは対称的に楽しめた。大衆文学系ドラマの完成形と言ってよかった。