「海に眠るダイヤモンド」が考えさせたもの
近年の純文学系ドラマの完成形はTBS『海に眠るダイヤモンド』(2024年)だろう。高度成長下の長崎・端島(軍艦島)の人々を描いた。
主人公の1人・荒木鉄平(神木隆之介)と恋人の朝子(杉咲花)が、50年以上も離ればなれになりながら、思いを寄せ合い続けた姿に胸が熱くなった。
鉄平が亡くなる前、朝子が訪ねてきたときのために自宅の庭にコスモスの花を植えていたのには目頭が熱くなった。
80歳を過ぎた朝子(宮本信子)は鉄平や端島の仲間が全て死んでいることを知り、意気消沈する。だが、自分の胸の中で仲間は生きていると考え直し、再び前を向いて歩き始める。感動的だった。
だが、視聴率はそう高くはなく、個人の平均値は5.2%。世帯は同8.4%。朝日新聞はこう評した。
「やや苦戦と言える。放送期間中に衆院選(2024年10月27日)を挟んだ影響なども指摘される」(同12月15日付)
評判は滅法良いのに、視聴率が高まらないことを不思議に思ったネットメディアが、「なぜ視聴率が高まらないのか」との特集を組んだほど。
どうして高視聴率にならなかったのか。選挙があったこと、見逃し無料配信動画サービス「TVer(ティーバー)」の普及、録画視聴率の高まりもあるが、視聴率に恵まれにくい純文学系ドラマだったからではないか。
『海に眠るダイヤモンド』は観る側に生き方について考えさせた。『早春スケッチブック』と一緒である。人生を考えるドラマは熱が高まりやすいようだ。誰にでも関わるテーマだからだろう。一方で純文学性の色濃いドラマは重たく難解と思う人もいる。