全国で倒産した企業の数が3年連続で前年を上回り、去年は1万件を超えたことが、1月14日に発表されました。そんな中、企業の人材獲得競争が激化し、大手企業の間では新卒の「初任給引き上げ」が加速しています。中には、初任給を30万とする企業も。こうした動きについて、りそな総研・荒木秀之主席研究員の見解を踏まえつつ解説します。

人手不足・物価高…行き着く原因は「賃金が上がらない」こと!?

 ここ3年間、毎年増えている企業の倒産件数。「2025年はさらに増えるだろう」と、りそな総研の荒木秀之主席研究員は指摘しています。企業の倒産が増える原因は、人手不足と物価高です。

 まず、人手不足の要因としては、以下の3つが挙げられます。

 ▼人口減少が世界最速レベル:2060年には日本の人口は9810万人になると推計されている(※国連「世界人口統計」より) 労働人口は30年で3割減るという試算も
 ▼移民が少ない:受け入れを増やすには円安是正や中小企業への政府の支援が必要との指摘も
 ▼流動性が低い:日本は転職経験がある人の割合が約6割(※Indeed Japanより)で、9割を超えるイギリス・アメリカなどに比べて低い

 そして物価高の問題。原材料や人件費などのコストが上がっているのにもかかわらず、値上げができず、倒産するという会社が増えています。この値上げができない理由を辿ると、行き着くのは「賃上げができていない」ことのようです。

 賃金が上がれば物価が上がっても消費が増えますが、賃金が上がらなければ消費が進まなくなるため、値上げができなくなります。つまり、人材を確保するためにも、値上げするためにも賃上げは重要となってきます。