鈴木は強力ルーキーたちの中で一歩抜け出た存在

鈴木芽吹は今季の5000mと10000mで、強力ルーキーたちの中でも頭1つ抜け出た実績を残してきた。10000mは八王子ロングディスタンスで27分20秒33と、今季日本2位、歴代5位の好記録で走り、5000mでも13分13秒80の今季日本3位、歴代9位をマークした。
「10000mはもう少し出したかったのですが、5000mはあそこまで行くとは思いませんでした」。

日本選手権でも10000m4位と5000m3位。ルーキーというカテゴリーで見るよりも、日本のトップ選手の1人として見るべきレベルに成長した。

その背景として「学生時代より駅伝の数が減り、年間を通してトラックの試合1本1本に集中できるようになった」ことを挙げる。「試合に出たらしっかり休んでまた、次の目標に向けて練習期間をしっかりとる。そのサイクルが上手く回り始めました。練習メニューは学生時代と大きく変わっていませんが、質的に少し上がっています。故障をしなくなっていることも大きい」。

日本のトップ選手として走る自覚が、鈴木の言葉には多く現れている。
「スピードは実業団選手の中でも上の方だと思います。スタミナもやってきているので、駅伝では両方を生かして安定した走りをしたいです。10000mは日本記録(27分09秒80)を出す手応えがあります」。

練習中に、このメニューをこのタイムで走ったから、という根拠があるわけではない。だが前述の試合と練習のサイクルが上手く回り、シーズン前半に取り組んだ5000mで好記録を続けたことで、10000mの日本記録をイメージできるようになった。

1区での強力ルーキー対決が実現するか

吉居のニューイヤー駅伝出場は1区か3区が有力だ。チーム状況で変わる可能性があるが、吉居自身は箱根駅伝でも快走した1区への意欲を見せている。同学年の三浦龍司も1区か3区の可能性が高く、吉居は1区での対決を望んでいる。

「ニューイヤー駅伝は1区をヨーイドンで走れたらいいですね。トラックではまだ(五輪8位の三浦に対して)ライバルと言えるような結果を残していませんが、駅伝だったらトラックの5000mより勝つチャンスがあります。駅伝では負けたくないですね」。

ルーキーの1区候補には佐藤一世の名前も挙がっている。4年前には全国高校駅伝1区で区間新(当時)をマーク。1年前の箱根駅伝は4区区間賞で、青学大の優勝に貢献した選手である。

佐藤自身は「向かい風の方が追い風より得意」と言う。ニューイヤー駅伝も「(向かい風となる)後半区間の方が適性がある」と話していたが、関西実業団駅伝1区ではスタート直後から積極的に前に出て、終盤は独走して区間2位に21秒差をつけた。

吉居、三浦、佐藤の強力ルーキートリオが1区で対決したら、盛り上がるのは間違いない。だが区間賞候補には、東日本予選1区を独走した吉田祐也(27、GMOインターネットグループ)、高卒2年目で将来が期待されている長嶋幸宝(20、旭化成)らも挙げられている。ルーキー対先輩選手、という構図でレースを見るのも面白いかもしれない。

鈴木は最長区間の2区か3区が有力だが、ルーキー同士の争いよりも、他チームのエースと勝負することが自分の役割だと考えている。「ライバルはHondaの伊藤(達彦、26)さん、旭化成の葛西(潤、24)さん、GMOの吉田さんたち。代表レベルの選手たちに勝ちに行きます」。

その先には来年以降の世界陸上やオリンピック出場を見据えている。「世界陸上出場が現実的になっていることが、昨年までとは違います」と言い、世界と戦うためにラストスパートを研く方法も具体的に考えている。

“芽吹”という名前は両親が、「人生の中でどういう世界に飛び込んでも芽吹いていくように」という期待を込めて付けてくれた。長距離種目で世界と戦っていく鈴木が、ニューイヤー駅伝で芽吹いていく。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

※写真は鈴木芽吹選手(左上)、吉居大和選手(右上)、三浦龍司選手(左下)、佐藤一世選手(右下