103万円の壁などは来年度税制改正で議論
国民民主党の「手取りを増やす」というキャッチフレーズが魅力的に見えるのは、上述のような経済対策の限界を多くの人が感じ取っているからでしょう。国民民主党が最重要課題とする「103万円の壁」解消と、ガソリン減税については、今回の経済対策(今年度補正予算)ではなく、来月中旬にかけて行われる来年度の税制改正の議論の中で、具体的な結論を出すことになりました。
「103万円の壁」については、自公国の3党合意に「引き上げる」と明記したので、今後引き上げ幅や財源など、制度設計の具体的な議論が進むことになります。その内容によっては、それなりの所得税減税が実現することになりますので、来年度以降、経済対策としての効果も期待できるかもしれません。
石破政権の経済政策の軸とは?
このほか、今回の経済対策には、岸田政権からの引継ぎ事項でもある、半導体やAI(人工知能)産業への10兆円を超える支援策が盛り込まれた他、能登半島地震・豪雨被害の復興、さらには石破総理のかねての主張である「避難所の環境改善」といった防災・減災対策も入っています。
選挙結果や前例を踏襲しながら、補助額もケチりつつ、石破政権らしさも多少まぶして、まとまった今回の経済対策。政権基盤の弱い石破政権の下では、霞が関の官僚たちによる舞台回しの力が相対的に強まっているように見えます。その分、石破政権の理念やこだわりは、なかなか見えてきません。新政権として初の、しかも大規模な経済対策なのに、です。
確かに、政治の世界の関心は、目先の経済対策よりも、「103万円の壁」に代表される、国民民主党との折り合いのつけ方に移っています。この先、来年度の税制改正や予算をめぐる、いわば本丸の議論で、石破総理のめざす経済の姿が改めて問われることになるでしょう。