夏休み期間は水の事故のニュースが相次いだ。「自分は大丈夫」と気の緩みから川で溺れてしまった男性が語る“川の怖さ”…。そして、各地で発生するゲリラ豪雨が川に与える影響から命を守るためにはどうすればいいのか、専門家に聞いた。

まさか自分が溺れるなんて…初めて感じた川の怖さ

「心の中で油断してたし、自分は溺れないと思ってました、本当に」

安藤哲也さん(41)は2年前、友人家族に誘われて三重県内の川へ遊びに行った。
川遊びは初めて。「きれいな川だな、でも気をつけなきゃ」くらいの心持ちだったという。

安藤哲也さんたちが遊んだ川

安藤哲也さん
「事故のニュースはよく聞くから、子どもにライフジャケットを着せるのは当然だと。でも、自分は泳げるからライフジャケットはいらないって思っていました」

子どもたちがいるところへ平泳ぎをしながら向かおうと、腰ぐらいまで川に浸かった安藤さん。少し休憩するために立とうとしたその瞬間、川の深みにはまり、急に真下に落ちてしまったという。

「バサーって顔を出してクロールしようとしたんですけど、体が動かなくて。川の流れが自分が向かいたい方向と反対だったんです。向こうの方に友人の姿は見えていたんですけど、うまくいかない、苦しいみたいな。前に進むのは恐怖でした」

安藤さんが「自分は大丈夫」と過信してしまったのには「あんな小さい子たちがあそこにいるなら、普通に横断できる」という思い込みがあった。一瞬の気の緩みで、大人も川の事故に巻き込まれかねないと痛感した安藤さんは「絶対に川はなめちゃいけない」と強調する。

実際、今年のお盆休みも川の事故が相次いでいる。埼玉県嵐山町の渓谷で遊んでいた21歳の大学生が下流に向かって泳いでいたところ、溺れて遺体となって発見された。また、神奈川県南足柄市の川で泳いでいた30代の男性も溺れて亡くなっている。

警察庁(※1)によると過去5年間、河川での事故で死亡もしくは行方不明となった人の数は増減を繰り返し、なかなか減少傾向には至っていない。

2019年(令和元年)92人
2020年(令和2年)112人
2021年(令和3年)87人
2022年(令和4年)88人
2023年(令和5年)100人

※1 警察庁 令和5年夏期における水難の概況