愛媛県今治市の山の中に、ひっそりと建つ小さな石碑。
そこには戦争の荒波に翻弄され、命を落とした2人の若者の名前が刻まれています。終戦から77年。
あらためて平和のあり方が問われる今、石碑が訴えかけることとは。
石碑の存在すら話そうとしなかった父 偵察機に3人乗り特攻に出撃…殉職の隊員慰霊 悲劇の現場を遺族が31年ぶり訪問(2024年5月取材)

愛媛県今治市の玉川支所から車を走らせること、約15分。国道から脇道に入り、しばらく走ると林道の入り口が見えてきました。ここからは車を降りて険しい山道を進みます。

登山道では無いため、滑り落ちそうな場所や川を渡る場面も。迷ってしまいそうな山道を歩くことおよそ30分。「ハナビラ渓谷」と呼ばれている場所の一角に、その石碑はありました。

「特攻隊員殉職の地」の文字と、合わせて刻み込まれた2人の名前。そばには1本の鉛筆が手向けられています。

「学業を断念せざるを得なかった。机に向かうという意味だろう」と話すのは、今治市職員の馬越健児さんです。長年、郷土史を調査していて、11年前に市の広報誌でこの石碑を紹介しました。戦局が絶望的となり、終戦を目前に控えた昭和20年・1945年5月19日。この場所に、1機の飛行機が墜落しました。
