郷土作家・吉村信男さんの著書

「ハナビラ渓谷」の石碑の記憶を後世に残そうと、今から約30年前、郷土史にまとめたのは、今治市の歴史に関する著書を数多く手掛けてきた郷土作家の吉村信男さん(78)。「なぜ特攻機に3人も乗せて敵に突っ込もうとしたのか、そういう疑問があり調査を開始した」と話します。元学校の先生など、色々な人に聞いたという吉村さん。当時を知る人たちに取材を重ねた結果、墜落時の様子が浮かび上がってきました。

郷土作家・吉村信男さん
「ちょうど昼ごろに『バーン』という、飛行機がぶつかった音がして、チラッと日の丸が見えらしい。その後、男が5~6人で捜索隊を結成して山を登った。ところが、飛行機の横に大きな爆弾が付いていて、あれが恐ろしいと。あれが爆発したら大変だと、皆怖がったらしい」

また、墜落事故で亡くなった川橋さんの遺族から、救出された乗組員についても聞いていました。

郷土作家の吉村信男さん

郷土作家・吉村信男さん
「生き残った佐藤さんという人は、当時の状況をほとんど喋らなかった。自分だけが生き残ったということが、生涯背中に張り付いていたのだろう。亡くなった人の遺族は辛いが、生き残った人も辛い。結局何も話さずに亡くなった。まさに地獄ですよね、戦争イコール地獄」

戦争にまつわる体験談を、いかにして後世へ伝えていくか。吉村さんは語ります。

郷土作家・吉村信男さん
「たくさん居た語り部の人たちも、高齢でもうほとんど居なくなってしまい、戦争の現実はこうなんだ、考えているような、そんな生易しいものじゃないんだという、生の声が届かなくなってきている」

時の流れは、悲惨な記憶を急速に風化させようとしています。

「戦争は終わっていない。終戦の日だが、私はやはり戦争は終わっていないと思う。今も続いている」

吉村さんは、今だからこそ、歴史を正しく語り継いでいくことが、これまで以上に重要だと感じています。

郷土作家・吉村信男さん
「いかに戦争が残酷であったかを、これからも、語り部が居ないのなら文章で書き継いでいかなければならない。伝えたい。これからも」