クーデターから2年、バンコクでの任期終了…「このまま帰国できるのか?」

2023年3月。クーデターから丸2年が経過しても、ミャンマー国民の苦しみは続き、状況が改善する見通しも立たないままだった。
そんな中で、私の4年半にわたるバンコク支局での任期は終わりを迎え、4月頭には日本に帰国するように会社から辞令が出た。しかし、帰国日が近づくにつれ、私の中で自分に問いかける声がだんだんと大きくなっていった。
「このまま帰国できるのだろうか?日本での平和な暮らしに戻れば、彼らへの思いも薄れてしまうのだろうか?」
答えはノーだった。
国境地帯での取材を重ね、民主派勢力と繋がるにつれ、彼らの勝利のために、ニュースを出し続けること以外に、もっとやれることがあるのではないか、そんな思いも芽生えていた。
すでに後任人事が決まっており、私がバンコク支局のポストに残るなんて我儘は、許されるはずもない。そして何より私は、すでに自分がこの事象を「取材したい」とは、感じていないことに気づいていた。
軍政を倒して民主的なミャンマーを実現する、その活動の「当事者になりたい」と思ってしまっていたのだ。であれば、私は記者としてこの事象に関わるべきではない。
帰国を目前にして、私は当時の上司に退職の意思を伝えた。会社には迷惑をかけてしまう。日本にいる家族も説得しなくてはならない。それ以外にも様々な課題があり、実際に退職するまで、そこからほぼ1年かかってしまうのだが、2024年4月、私はタイ北西部のミャンマー国境地帯に拠点を置き、活動をスタートさせた。