”農業”の可能性?自給自足からその先へ

自分に何ができるのか、半信半疑のまま飛び込んだことは否定しないが、具体的に何をやるのかについては一つの計画があった。
農業である。
国境地帯に逃れてきた民主派勢力の人々の中には、自給自足のために農業を始めている人たちがいた。
その人々の支援に、NPO法人「グレーターメコンセンター」(以下GMC)が立ち上がった。
GMCはもともと、ミャンマーの少数民族に、農業を通した職業訓練を続けてきた実績があり、そのノウハウを活かした取り組みであった。
事業は外務省の「日本NGO連携無償資金協力」の一環で、農業支援だけでなく、軍による空爆などで焼け出された避難民への食糧支援、医療支援などと併せて基本的にはその予算で行われていた。
GMCは国境地帯の広大な耕作放棄地を借り上げて彼らに提供し、必要経費の一部も支援していたが、予算には限りがあるし、性質上永遠に続くものでもない。
農業支援の目標はあくまでも彼らの「自立」であり、最終的には支援が必要なくなるところまで、農業による収入を増やしてもらう必要がある。
当初、この支援の動きを取材していた私であったが、ニュースとして世の中に伝える以上に、私にやれることがあるのではないか、という直感があった。
彼らと企業を繋ぎ、農業ビジネスとして成立させることができるのではないだろうか、と考えたのだ。
タイで生産された農作物を日本の消費者向けに輸出している日系企業に心当たりがあった。その企業が求める品目の農作物を、日本の消費者に合う品質で生産することができれば、比較的高い価格で彼らから買い取ることができる。日本に輸出するためには、農薬の使い方や種類など日本の規格にあう農法で生産する必要があるが、それは彼らの農業技術の向上にもつながるのではないか。
GMCの支援の枠組みの中で、その支援が無くなっても継続できる事業を作る、それが私のミッションとなった。